セミナー後は、博士課程で学ぶ4名のオープン・トラック奨学生を含む18カ国から集まった39名の新規奨学生を迎えるための歓迎レセプションが開催されました。日本の財務省および関連する大使館や中央銀行東京事務所の代表らも出席し、新たな奨学生を歓迎するとともに、彼らの研究が幸先のよいスタートを切れるよう願うと述べました。特に、日本の財務省国際機構課課長の吉田昭彦氏はゲストスピーチの中で、日本が経験したことから教訓を学ぶこと、また人的ネットワークの構築に努めることを奨学生に奨励しました。また、パートナーシップ奨学生代表として一橋大学修士課程に在学中のモンゴル中央銀行のバァトクゥレル セルダバァ氏、オープントラック奨学生代表としてIUJ博士課程に在学中のミャンマー中央銀行のタン・タン・ソー氏が、それぞれスピーチを行いました。スピーチの中で両氏は、JISPA奨学生として日本で学ぶことの喜びを語り、日本政府とIMFの支援に対する謝意を表し、奨学生らが研究に成功することを願うと述べました。
オリエンテーション・プログラムの修了: 35名の新規パートナーシップ・トラック奨学生は、日本の国際大学(IUJ)でのオリエンテーション・プログラムを無事修了しました。同プログラムはすべての奨学生が同一キャンパスで学ぶ唯一の機会です。よってこの経験は、日本-IMF奨学生としてのアイデンティティを形成し、専門課程の研究に向けて各大学へと進む前にチーム精神を醸成する一助となりました。
奨学生のコメント:JISPAオリエンテーション・プログラム(OP)、JISPAセミナーおよび2015年10月22日の歓迎レセプションでの経験 オリエンテーション・プログラム (OP)は、私も含め、すべてのJISPA奨学生にとって、本コースへの導入として考えられる最高のプログラムでした。一般に知られているように、「OP」は、特に政府や中央銀行に正規雇用されているため暫く定期的な勉学・研究の機会がなかった人たちに対して素晴らしい学びの経験を提供するものです。このプログラムは日本の一地方、東京から約350キロメートル離れた日本の北西部に位置する新潟県南魚沼市の浦佐にある国際大学(IUJ)で開催されます。IUJは、日本の豊かな地方の文化生活を垣間見せ、日本の農業生活の様々な様子を理解する自然環境を与えてくれます。数学、計量経済学、マクロ経済学、英語および日本語といった教科を幅広く集中的に学ぶことで、奨学生は日本での今後の学びに備えることができます。私は中でも、日本で最も優れた経済学の教授である柿中真教授が教鞭を取られた数学のOPクラスが有益でした。
OPの他に、JISPAが主催する定例イベントのひとつであるJISPAセミナー・シリーズは、経済研究の先端分野の幾つかにおける研究開発について知るためのプラットフォームを提供するものです。同セミナーは、現代における経済研究の専門的な問題についてより深く理解し、その分野の専門家と交流する機会となります。JISPAセミナーは、様々な分野で現在行われている研究に対して私の視野を広げてくれました。さらに、同セミナーの交流セッションは、同一の問題について他の様々な視点を引き出すブレインストーム・セッションのようなもので、特に興味深いものとなっています。こうしたセミナーは、私たちが教室で学ぶ経済理論を、経験に基づく経済研究に実際に応用する場となります。JISPAセミナーに参加することの価値は計り知れません。
2015~2016学年度の第1回JISPAセミナーは2015年10月22日に開催され、セミナー終了後には歓迎ディナーが行われました。セミナーで発表された論文は「現在進行中」とのことで、タイトルは「日本の金融政策の新興アジア諸国への波及:グローバルVAR分析」、IMFのOAP次長ジョバンニ・ガネリ氏とOAPインターンのノア・タウク氏の共著によるものでした。この論文は、日本の「量的・質的金融緩和」(QQE)の中国、タイ、マレーシア、インドネシアおよびフィリピンといった様々なアジア新興経済国の各種経済指標への波及を、GVARモデルを用いて分析、定量化しようとするものです。具体的には、同論文は貿易、金融等の様々なチャネルを通じた当該QQEの波及を予測しています。この研究は、貿易と対外直接投資の双方から財政上の波及があり、研究対象国の大半について金融緩和(QQE)がGDPを増大させ、株価を押し上げたと見てとれることを示しています。とはいえ、これらの国の大半ではインフレの一時的な上昇も見られました。質疑応答セッションでは、金融政策のショックを示す変数として、株価の代わりに、マネタリー・ベース等の変数で代用することが提案されました。また、GVARモデルの明確化に関する提案と説明もありました。プレゼンテーションは進行中の内容であったことから、プレゼンターは研究結果をまとめる際にこれらの提案を考慮することとしました。同セミナーは、聴衆からの拍手をもって終了しました。JISPAセミナーの後は歓迎レセプションが開催されました。歓迎レセプションの中で、JISPA奨学生の代表者がプログラムについて意見を述べ、すべてのJISPA奨学生を代表して、来日して研究するという素晴らしい機会を与えてくれたことについて日本政府とIMFに対する謝意を表しました。
(アビナシュ・ダシュ氏、2015~2016学年度政策研究大学院大学、インド財務省)
OAP主催セミナー: JISPA奨学生はOAP主催の以下のセミナーに招待されました。
- アベノミクスの実現に向けて:構造転換に必要な優先課題
スピーカー: カルパナ・コーチャー氏(IMFアジア太平洋局副局長)
2015年9月4日
- 中国:足元の動向、今後の見通し、ならびに改革
スピーカー: アルフレッド・シプキ氏(IMF北京駐在上級代表)
2015年10月19日
- 世界経済見通し
スピーカー:ジャン・マリア・ミレシー・フェレッティ氏(IMF調査局副局長)
2015年11月16日
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