1. 日本に留学する前の職務内容について教えて下さい。
日本で大学院の勉強を始める前は、フィリピンの国家経済開発局(NEDA)で国家計画・政策スタッフの一員でした。私のNEDAでの主な任務は以下のようなものです。
- マクロ経済の予測モデルの再構築と評価
- 経済状況と経済政策、計画、プログラムの進捗に関する定期レポートやブリーフィングの準備。特に、通貨や海外部門を中心に担当
- インフレ予測や様々な価格変動要素(例えば、原油価格、為替レート、賃金、輸送関連費)を用いた感度分析を含む政策のシミュレーション
2. 日本で勉強しようと思ったきっかけは何ですか?また、JISPAへの応募動機は何ですか?
私は2012年にJISPAのみに出願し、他の奨学金プログラムには一切応募しませんでした。それは第一に、私がそれまでIMFやそこで働く人々と数多くのよい出会いを経験していたことにあります。特に、IMF四条協議がフィリピンで行われたときや、シンガポールで行われた能力開発のための地域セミナーに参加したときがそうでした。しかし、最も忘れられない出来事は、私の所属していた部門がフィリピンで動学的確率的一般均衡(DSGE)モデルを開発しようと、IMFに支援を求めたときです。私たちはIMFの様々なエコノミストから、モデルを作るという観点以外に、尊い励ましの言葉を含む多くの支援をもらいました。
もうひとつの主な理由は、東京大学のように、一流かつ世界的にも有名な大学で学ぶことが私の夢だったからです。
3. 何を勉強していますか?
東京大学での私たちのカリキュラムは経済学が中心です。母国で経済政策を策定する立場を考えると、JISPAの奨学生が精通していなければならない学科です。東京大学で私は、関心のある具体的なトピック、特に金融危機、金融発展と不均衡についてのケーススタディ講座を履修することができました。
しかし、東京大学での経験を際立たせているのは、アイデアや考えを経済学の領域を超えて、例えば、政治学、法学で探究できることだと思います。また、社会科学分野外の課題を扱う講座を受講できることもありがたいと感じています。いくつか例をあげますと、エンジニアリングの観点から見た持続可能な発展、ロボット工学、神経科学、神経外科学といった分野です。私たちは東京大学医学部で、設備のいくつかを操作する機会すらありました。
4. 日本での体験話(楽しかった/悲しかった/驚いた/感動した、から好きなエピソードをひとつ)
ひとつだけあげるのは少し難しいですね。それくらい東京に住むことは素晴らしい出来事の連続だからです。この巨大都市では毎日のように珍しいもの、美しいものに出会うことができます。それはほぼ2年間ここに住んだ今でも変わりません。
思いますに、日本人の親切さや礼儀正しさは、日本に暮らすことをとても心地よいものにしてくれています。ある女性は車を停めて降りると、私たちが見つけられずにいたレストランの場所を教えようと、何メートルも一緒に歩いてくれました。あるときは携帯電話を、また、あるときは財布を落としてしまったときも、数日後、いずれも戻ってきました。
そして何よりも、日本、とりわけ東京に暮らしながら、母国もいつの日か似たような発展レベルを実現してほしいと願う気持ちを新たにしています。
5. JISPA関連の体験話・感想(Orientation Program、セミナーやIMF/OAPエコノミストとの交流イベント等)をお願いします。
JISPAについて最もありがたいと思っていることは、私たち奨学生にそれぞれの大学の境界を超えて学ぶ場が提供されることです。尊敬されるIMFのエコノミストたちによる様々なセミナーは私たちに貴重な知識をもたらし、IMFによって重要と判断された地球規模の課題、自国の状況にも密接な関わりを持つ経済問題について、より多くの気づきを与えてくれました。
とは言え、JISPAのオリエンテーション・プログラムはJISPA奨学生であることの最も忘れがたい部分であることに違いありません。初めて友情の絆を繋いだ新潟県での最初の数ヶ月を、奨学生仲間たちといつも懐かしく語り合っています。この関係はきっとこれからも時間と距離を越えて続いていくことでしょう。
6. JISPAで学んだことを将来どのように本国での業務に活かしたいですか。
東京に来る前は、経済政策を分析することは非常に困難な仕事だと感じていました。本当の意味で信頼できる政策的助言をできるようになるには、膨大な経験と知識が必要だからです。自分のしていることは自国のためという現実を前にすると、うまくやらなくてはと思うプレッシャーはさらに強くなるものです。
東京大学で得た訓練によって、いまや様々な政策課題や難題に、より自信を持って立ち向かうことができるようになったと感じています。国際レベルでの近年の経済発展が不確実性によっていかに損なわれやすいか、そして、これらの発展が国内経済にいかに影響を及ぼしやすいかを認識するにつけ、JISPAプログラムのもとで得られた知識を、前途に横たわる課題により効果的に取り組めるよう役立てています。これまで学んだスキルや得た新しい視点は、フィリピンに帰国する頃にはよりよい公務員となれるよう、自信を与えてくれています。
7. 将来の夢、キャリアビジョンは何ですか?
大学を卒業する前から、私は自分自身が経済発展をもたらすために働いている姿をいつも思い描いてきました。そのため、私が選択してきたキャリアパスは、それがマクロであれミクロであれ、常に経済発展の問題を中心にしてきました。それもあり、私は今後もこのプロフェッションの道を歩み続けたいと考えています。しかし、さらに能力を高めるためには、次の勉強に取りかかる必要があり、経済学博士号を取得するために一生懸命勉強を続けたいと思っています。もしそうできたら、経済学を活用して、特に経済発展に関して広まっている諸問題に取り組む貢献をしたいと考えています。
8. 好きな言葉は何ですか?
子供の頃からずっと「最高の栄誉は一度も転ばないことではなく、転んだら常に起き上がることにある」との諺を人生の指針としてきました。最近、これには「七転び八起き」という日本版があることを知りました。
9. 日本へのメッセージ
日本の最高の大学で教育を受けるという恩恵を得た奨学生として、今後どこへ行こうとも、私はこの優れた価値を持ち続ける責任を自らに課していきます。ここで学んだことを常に肝に銘じ、探究心と熱い心を育んでくれた日本に対する感謝の気持ちを忘れず、日本で得た素晴らしい思い出をいつまでも大切にしていきたいと思います。
10. 他に伝えたいことはありますか?
JISPAの皆さまへ。JISPAに応募した日から再び祖国へ帰るその日まで、いつもご支援をいただき、そして、快く私たちのためにお時間を取って下さったことに、心からの謝意を表します。本当にお世話になりました。
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