カンボジア国立銀行(中央銀行)副総裁ネウ・チャンタナ閣下とのインタビューでは、JISPAの貢献に対するカンボジア国立銀行(NBC)の考え方について伺いました。また、NBCの変化するニーズに応え続けるためにJISPAが目指すべき方向性に関して、NBCの意見をお聞きしました。
本ニューズレターは、ウズベキスタンの財務副大臣として活躍中の同窓生、ム-ビン・ミルザエフ氏とのインタビューを掲載しています。インド準備銀行出身の現役奨学生、ラナ・ラトゥル氏のインタビューも掲載しています。2013年9月から11月のJISPA関連の活動は「JISPAニュース」で紹介しています。
1. カンボジア国立銀行(NBC)は36名の行員を日本-IMFアジア奨学金プログラム(JISPA)に派遣してきました。NBCはどのようなタイプの行員に対してJISPAへの応募を勧めているのか、簡単にご説明下さい。さらに、NBCのJISPA卒業生がこれまでに挙げた実績について、いくつか例を示しながらご説明をお願い致します。
カンボジア国立銀行(NBC)は、日本国政府および国際通貨基金(IMF)、そして特に日本-IMFアジア奨学金プログラム(JISPA)がこの20年間、大規模かつ非常に効果的な支援をしてくださったことに、感謝しています。
実際これまで、現在留学中の者を含め36名のNBCの行員がJISPAプログラムによって日本で学んできました。基本的にNBCは高い潜在能力と資格を持つ候補者を選び、その中から、プログラムにふさわしい行員を最終決定します。これには以下ふたつの目的があります。
- 個人レベルでは、選出された候補者がその能力と知識を大幅に向上させること。
- 銀行全体としては、NBCの経営および経営陣の質を全体的に向上させること。
手短に言えば、NBCは「最も優れたスタッフ」に対してJISPA参加を強く勧めているということです。行内では、JISPAがとても良いインセンティブであるという点で、意見が一致しており、実際、NBCはJISPAを最優先としています。それはこのプログラムが最高の「人的投資」のひとつと考えられているためです。
JISPAを通じて派遣先の大学をすでに卒業した32名の行員は、NBCの多くの事業分野の近代化に重要な貢献をしており、以下に示すように、幹部職に昇進した者もいます。
- 元NBC経済調査統計部長、カイ プースヌッ氏は、IMFの統計局シニアエコノミストとして働いています。
- ングォン ソッカー氏(元NBC局長)は、最近経済財務省長官に指名されました。
- タイ・サピーア氏(副事務局長)
- キムティー カオマリ氏(副局長)
- ソック・マン氏(副部長)
- リー・シデッス氏(副部長)
- ルン・サム・オル氏(副部長)
2. JISPAが奨学生に提供する内容に関して、NBCがどのような側面および特徴を評価しているのか教えて頂けますか。
多くの側面においてJISPAがNBCにとって極めて有益であるということに疑いの余地はありませんが、主な特徴の中でも以下の点について特に強調しておきます。第1に、我々が高く評価しているのは、この奨学金制度が本質的に質の高いものだという点です。研修生はもちろん大変な努力をしなければならない訳ですが、彼らにとっても、ひいてはNBCにとっても非常に有益なことです。JISPAを通して奨学生は最も優れた教育制度のもとで多くのの学科を学んでいます。第2に、このプログラムは中央銀行の行員にとって最も重要かつ適切なテーマを網羅しています。JISPAはNBCの主たる機能に有効的に重点を置いたものとなっています。第3に、理論・実践の両分野におけるコースにより、社会生活を送り専門職として活動する中で、奨学生が直面する様々な予想外の問題に対処することができるようになります。こうしたことから、研修生は学んだことを効果的に実践に移すことができるのです。
このプログラムは、以下のような機会も提供してきました。
- 日本国内の様々な大学で、変化する世界についての実践的かつ理論的な知識の習得の機会。日本は、移行経済国の留学生が経済社会開発に関する見解・経験を共有できる、国際的な学習ハブとなっています。
- こうした地域の幹部・学生とのネットワーク構築の機会。
結果的に、学習の達成を通じて参加者の英語のレベルも著しく向上するのですが、これも間違いなくJISPAの利点です。
3. 行員がJISPAプログラムを通して日本で学習する間、一番学ぶ必要があるとNBCが考える分野を簡単に説明して下さい。NBCのJISPA奨学生にとって、日本におけるそういった分野の学習成果は、帰国後にどの程度活かされましたか?
行員がJISPAでの学習期間中に学ぶ必要があるとNBCが考える科目は数多くあります。それらはすべて、中央銀行の中核業務に明確に関連したものです。
そのひとつが金融政策実行の基本となるマクロ経済政策です。もうひとつの重要なテーマは金融の安定性です。このふたつは、現代の世界環境において、中央銀行職員にとってますます重要な課題となっています。このふたつの重要な分野では、アカデミックな知識と日々の実践のみならず、専門技術を正しく使用する能力も必要とされます。従って、一部のコースが金融政策を実際に支援し実行することを目的とした、統計学、計量経済学、数学的ツールに充てられていることをNBCは高く評価しています。金融市場の安定性確保のため、NBCは、リスク管理、必要資本、システミック・リスク対策、これらのテーマと金融政策の関係といった領域に能力と充分な知識を有するスタッフを必要としています。
こうしたことから、これらの科目がプログラムの大きな割合を占めるのが理想です。 スタッフにこれらの領域についての知識を高めてもらうために、リーダーシップ・コースも含まれています。最後に、スタッフが 最新の統計ソフトウエア開発に対応するため、効果的な訓練を受けることができれば、とも考えています。
これまで、NBCのJISPA奨学生全員が、様々な領域において、日本での学習から大きな成果を挙げて戻ってきています。NBCはこうした手厚い協力関係がこれからも継続することを心から望みます。
4. 全般的に、NBCは、JISPAがNBCの能力強化ニーズをどこまで満たしていると思いますか?
総じて、JISPAは長年NBCの能力強化に大きく貢献してきており、当行スタッフの能力開発およびその強化に引き続き重要な役割を果たしていきます。実際、NBCはまだ歴史の浅い金融機関であり、金融システムは急速に発達したものの資源は限られています。この点において、日本の支援、特にJISPAによる支援がカンボジアの金融セクターの将来の発展の決定要因である状況は続いています。JISPAがNBCのニーズを完全に満たしており、当行の能力向上に中心的役割を果たしていることに鑑みると、この支援はなくてはならないものとなっています。
最後に大切な点は、JISPAはIMFを通じて日本によって提供されるその他の技術支援と完全な補完関係にあることです。 これは主に銀行の監督問題に関したものであり、特にNBCに長期的に常駐するアドバイザーを任命していただいていることです。
5. NBCおよびカンボジアのニーズを満たすような、JISPAプログラムを強化するための提言をお持ちであれば教えて頂けますか。
すでに強調したように、JISPAはNBCのニーズを概ね満たしています。ただ、博士課程の奨学生の数を特に増やしていただけるとありがたいと思います。
また、若干改善していただける点があるとしたら、より実践的な研修の提供をお願いできないかということです。ただこの点については、すでにご検討いただいていると承知しています。
我々のスタッフが、そのキャリアの過程で遭遇するであろう実際の状況に慣れておくことは、非常にためになります。具体的には、可能な限り研修内容をカンボジアの実情に応用できるものとしていただければ、特に効果的であると思います。
6. 日本とIMFに伝えたいメッセージはお持ちですか。
最後に、NBCが日本およびIMFに伝えたい大きなメッセージは、カンボジア中央銀行はJISPAを通じて提供された特別な支援がなければ、現在の姿はあり得なかったであろうということです。
当行スタッフがJISPAから得た機会と学術的知識が、カンボジアに帰国後の成功につながり、NBCおよび何より銀行セクターに対して成した貢献の中心となっている点に疑問の余地はありません。
ここでもう一度、日本政府が技術援助と奨学金を提供して下さったことに感謝したいと思います。これは、カンボジア国立銀行のスタッフの能力強化の向上にとっては欠くことのできない貢献であり、さらなるご支援をお願いできればと思っております。
NBCがJISPAから受けた恩恵は専門分野にとどまらず、他にも非常に貴重なものが続いています。それは、カンボジアと日本という国家間の深淵かつ貴重な友情を示す、両国民間の深くて緊密な人間関係です。
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