財政モニター
財政モニター 2021年4月
2021年4月
第1章 財政対応を工夫する - 要旨
新型コロナウイルスへのワクチン接種が急がれているが、接種のペースは各国でかなり異なり、ワクチンを利用できていない国も多い。世界全体でのワクチン接種の浸透が至急求められている。世界各国で接種が進めば、雇用や経済活動が改善して税収が増加し、財政支援面でもかなりの節約が可能なので、接種にかかる費用も回収できる。パンデミックが世界的に制御できるようになるまで、財政政策は柔軟な姿勢を維持し、医療システムや家計、存続できる企業、景気回復を支援し続ける必要がある。財政支援の必要性や範囲は国によって異なり、パンデミックの影響であったり低コストの借入をどこまで利用できるかだったりに依存する。多くの先進国は、2021年において大規模な歳出・歳入措置(平均で対GDP比6%)を講じつつある。新興市場国やとりわけ低所得途上国の支援策はそれよりも規模が小さく、しかも危機当初に集中しており、終了しつつある措置もかなりの部分を占めている。
財政支援は、景気後退の深刻化や雇用損失の拡大を回避してきた。その一方で、そうした支援策は歳出の落ち込みと相俟って、所得水準を問わず、どの国グループでも政府赤字や債務残高をかつてない水準にまで高めている。2020年における財政赤字の対GDP比率を見ると、その平均は先進国で11.7%、新興市場国で9.8%、低所得途上国で5.5%となっている。歳出を拡大する能力における各国間の差が大きくなりつつある。先進国や一部の新興市場国における財政赤字の拡大には、歳出増や歳入減がほぼ同じ程度で影響しているが、多くの新興市場国やほとんどの低所得途上国では、景気低迷による歳入の落ち込みが主因となっている。財政赤字は、2021年には大半の国で縮小すると見込まれる。パンデミック関連の支援策が終了ないし縮小し、歳入がある程度回復し、失業保険の申請件数が減少するからである。
第2章 公平な機会 - 要旨
新型コロナウイルスのパンデミックによって、以前からあった格差や貧困が深刻化し、社会的セーフティネットの重要性が実証された。また、医療や、良質な教育、デジタルインフラなどの基本サービスへのアクセスに格差があることも明らかになった。そうした格差があると、何世代にもわたって続く所得格差が生まれる可能性がある。今後数か月は、すべての人にワクチンが行き渡るようにすることと、ワクチン接種を進めることが決め手となる。復興期およびその先については、政策では、良質な公共サービスへのアクセス格差を削減して、あらゆる人に生涯にわたる公平な機会を与えることを目指す必要がある。大半の国で、そのためには歳入を増やし、サービス提供を改善しつつ、包摂的な成長を促進していくことが必要になる。