IMF世界経済見通し

2024年10月 世界経済見通しの分析章

第2章 「大引き締め」:今般のインフレから得られた見識

世界が経験した今般のインフレは、供給の寸断と未曾有の財政・金融刺激策の中で、部門間に大規模な需要シフトが生じた点が特徴である。第2章では、各部門の価格圧力がコアインフレ率に与えた影響とフィリップス曲線の変化とスティープ化が、世界インフレ率の急上昇を理解する上で不可欠であることを示す。これは、部門間で見られた需要の移行や、貯蓄の取り崩しによる需要の後押しに伴い、主要部門が供給のボトルネックに直面したこととも整合性がある。本章では、金融政策の新しい教訓を提示するとともに、過去の教訓を裏付ける。各部門で供給のボトルネックが広範に生じ、強い需要が存在している極端なケースにおいて、インフレは急上昇するかもしれないが、引き締め政策によって、GDP損失を抑えつつ迅速に抑制できる。こうしたケース以外に、供給のボトルネックが特定の部門に限定されている場合には、従来の政策ルールが効果を発揮する。

第3章 構造改革の社会的受容性を理解する

世界が低成長や人口動態の変化、グリーン経済への移行・技術的移行に関連する課題に取り組む中で、構造改革が急務となっている。しかし近年、改革の取り組みは、強まる市民の抵抗を前に後退しつつある。第3章は構造改革の社会的受容性を詳しく掘り下げ、世間の態度の原動力や、支援を拡大するさまざまな戦略の有効性を調査する。その結果、市民の抵抗は経済的な自己利益よりも、認識、誤情報、そして信頼の欠如にしばしば原因があることが明らかになった。本章は、改革の必要性に関する意識の喚起や、政策の仕組みに関する誤解の是正といった情報戦略が大衆の支持を促進することを示す。効果的な戦略は、信頼を育む強固な制度的枠組みや、関係者と一般市民による双方向の対話で補完するべきである。市民の意見を組み込む政策立案ツールキットの拡大は、改革の社会的受容性を高め、改革の実施を成功させ得る。

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