ゲオルギエバIMF専務理事、回復を守るためのG20の重要な政策を促す
2022年2月18日
ベルギー、ブリュッセル : クリスタリナ・ゲオルギエバ国際通貨基金(IMF)専務理事は、オンラインで開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議において、次のように発言した。
「今回のG20会合にあたって議長国を務めるインドネシア政府ならびにスリ・ムルヤニ財務大臣、ペリー・ワルジヨ総裁に祝意を表したいと思います。
世界経済は回復し続けていますが、そのペースは減速しています。3週間前、IMFは2022年の世界経済の成長見通しを4.4%に引き下げました。依然堅調ではありますが、米国と中国の成長見通しが見直されたことなどが下方改定の理由となっています。
それ以降、オミクロン株の出現や、サプライチェーンの混乱が当初の予想よりも長引いていることを背景に、最新の各種経済指標は2022年の成長の勢いが鈍化していることを示しています。 同時に、インフレ指標は多くの国で高止まりし、金融市場の変動が大きくなり、地政学的緊張が急激に高まっています。
2022年を通じて複雑な「障害物コース」を切り抜けるためには、強力な国際協調と政策の並はずれた機動性が非常に重要となるでしょう。
3つの優先政策を取り上げたいと思います。
第一に、「長期の経済的なコロナ禍」とでも呼ぶべきものに対処する取り組みを拡充する必要があります。IMFは、パンデミックに伴う経済的損失が2024年末までに約13.8兆米ドルに膨らむと予想しており、オミクロン株はパンデミックが続く限り持続的かつ包摂的な回復が望めないことを思い知らせています。これまでに確立された健康保護策が新たに生じるかもしれない変異株を前にどの程度有効であるかについては、依然として大きな不確実性があります。
こうした環境においては、ワクチンへの一点集中から、検査と治療も含む包括的な新型コロナ対策ツールキットに各国が公平にアクセスできるようにする方向へ舵を切ることが最善策です。ウイルスの変化に合わせて常にこれらのツールを更新し続けるには、医学研究や疾病監視、そして各国の各コミュニティにおける「ラストマイル」を網羅する医療制度に継続的に投資することが必要となります。その目標の達成に向けて世界銀行がさらなる動員を発表したことは歓迎すべきものです。
第二に、多くの国で金融引き締めサイクルの舵取りが必要になります。先行き不透明感が高く各国間に著しい格差がある中、マクロ経済政策を各々の事情に合わせて慎重に調整しなければなりません。また、特に新興市場国と発展途上国に対する潜在的な波及効果のリスクにも対処する必要があります。回復を阻害することなくインフレと闘わなければなりません。
IMFは、加盟国が金融と経済の安定性に対するリスクを管理しつつ資本フローの利益を活用できるよう支援するために、春季会合までに資本フローに関する機関としての見解をまとめることを目指しています。また、「 統合的な政策枠組み 」の知見を活用する取り組みも順調に進んでいます。
第三に、各国は財政の持続可能性により重点を置く必要があります。危機下での異例の財政措置は大恐慌の再来を防ぐことに貢献しました。しかし、債務が歴史的に高い水準に増え、2020年には単年の債務増加額が第二次世界大戦以降最大となり、公的債務と民間債務を合わせた世界の債務総額は226兆ドルにまで膨らんでいます。
多くの国が債務の増大に直面しているものの、私たちは債務再編を必要とする国に対する支援を優先すべきです。債務返済に支障をきたすリスクが高いか、すでに支障をきたしている低所得国の割合は、2015年の30%から今日では60%と倍増しており、いくつかの国は債務を再編する差し迫った必要性に直面しています。
この点に関して、G20共通枠組みには重要な役割を果たす余地があり、私はその枠組みをより一層効果的なものにする取り組みを呼びかけています。そうした取り組みには、透明性と早期の対応に加えて、以下のものがあります。
- 一国が資金調達圧力にさらされているまさにその時に圧迫を加えることを避けるべく、交渉中は債務返済の猶予を認めること。
- 信頼を醸成し、民間債権者の参加を含め実施を円滑化するような、明確かつ期限を定めたプロセスを提示すること。
- 共通枠組みの対象範囲を拡大することにより現在対象でない国を取り込むための方法を見出すこと。
より一般的には、G20は共通善に関する世界的な野心を実現する共同の取り組みの勢いを維持する上で非常に重要です。それには、ニーズが最も大きいところに特別引出権(SDR)をできる限り多く融通することを通じて、歴史的な6,500億ドルのSDR配分の効果を高めることに注力することも含まれます。
これに関連して、IMFが提案した新規の強靭性・持続可能性トラスト(RST)をG20が承認したことを歓迎します。春季会合までにRSTを設立し、年次総会までに稼働可能にすることが目標です。それによって、脆弱な加盟国がより長期的な構造的課題、特に気候変動やパンデミックに関連する課題に対処することを支援できるようになります。
私たちは、RSTを稼働可能にし、また、脆弱な低所得加盟国にとって同様に重要である貧困削減・成長トラストの増額を支援するために、G20諸国の貢献に期待しています。最も支援を必要としている国のために世界全体で1,000億ドルのSDRを再配分するという野心に向けて達成された前進に私は勇気づけられています。これまでに約600億ドルの拠出が約束されています。
パリ協定の実施に向けた世界的な取り組みの勢いも維持しなければなりません。同協定の実施には、低炭素で環境に配慮した開発への投資を大幅に拡大する必要があります。ここでは、民間部門向けに気候変動の緩和への投資のインセンティブを生み出すためのカーボンプライシング・メカニズムをなどを通じて、各国政府が経済を脱炭素化するという明確な政策シグナルを発することが非常に重要となります。
IMFは、これらをはじめとするG20の優先事項を支援します。4月の次回会合を楽しみにしています。」
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