第39回国際通貨金融委員会(IMFC)コミュニケ(仮訳)
2019年4月13日
我々は、イラン、マラウィ、モザンビーク、ジンバブエでの、最近の自然災害による人的損失と破壊的な影響に対し、お悔やみを述べる。
世界経済の見通しと政策の優先事項
世界経済の拡大は続いているが、10月に想定されていたよりも減速している。成長は2020年に持ち直すと見られているものの、リスクは依然として下方に偏っている。これらのリスクには、貿易の緊張や政策の不確実性、地政学的リスク、及び、限られた政策余地や歴史的に高い水準にある債務、金融の脆弱性の高まりを背景とした金融環境の突然かつ急激な引き締まりが含まれる。長期にわたるその他の課題もまた、未だ残っている。
世界経済の拡大を保持するため、我々は、引き続き、すべての人々の利益となるよう、リスクを緩和し、強靱性を高め、必要に応じて成長を補強するために迅速に行動する。財政政策は、必要に応じてバッファーを再構築し、柔軟で成長に配慮したものとし、債務持続可能性の確保や、景気循環増幅効果(プロシクリカリティ)を避けつつの需要の下支え、社会的な目的の保全の間の適切なバランスをとるべきである。金融政策は、中央銀行のマンデートと整合的な形で、インフレが目標に向けた軌道を維持するか目標付近で安定すること、インフレ期待を引き続き支えることを確保すべきである。中央銀行の決定は引き続きよくコミュニケーションがとられ、データに基づくものである必要がある。我々は、金融の脆弱性や金融安定に対して生じつつあるリスクについて、マクロプルーデンス措置を含む手段によって監視し、必要に応じて対処していく。
強固なファンダメンタルズや健全な政策、強靭な国際通貨システムは、為替レートの安定に不可欠であり、強固で持続可能な成長や投資に貢献する。柔軟な為替レートは、場合によっては、ショックを吸収するものになりうる。我々は、為替レートの過度な変動や無秩序な動きが、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを認識する。我々は、通貨の競争的切下げを回避し、競争力のために為替レートを目標としない。
金融規制改革と構造改革を推進することは、潜在成長と雇用の引上げや強靭性の向上、包摂性の促進に決定的に重要である。このため、
- 我々は、可能な限り速やかな金融セクター改革アジェンダの適時、完全かつ整合的な実施と完了、そしてこれらの改革の影響に関して現在行われている評価について、重要性を強調する。我々はまた、規制と監督に関する継続した協力を通じて分断に対処し、構造変化に規制を適応させ、データ・ギャップを縮小する。
- 我々は、汚職への対処等によって、強力なガバナンスにコミットする。我々は、イノベーションと公平な市場競争を促進する政策を実施する。我々は、人口動態の変化から生じる課題に対処し、技術の変革や経済統合による利益が広く共有されることを確保し、調整コストを負う人々を効果的に支えるよう努力する。
我々は、国際的な協力と枠組みの強化に向けて引き続き協働する。
- 我々は、世界経済の持続的な成長を支えるマクロ経済政策と構造政策を通じて、過度な世界的不均衡を削減するために協働する。
- 自由で、公正で、互恵的な物品・サービス貿易及び投資は、経済成長及び雇用創出の主要な原動力である。このため、我々は、貿易の緊張を解決する必要性を認識し、WTOの機能を改善するために必要なWTO改革を支持する。
- 我々は、世界規模に公正で現代的な国際課税システムのための取組みを加速させ、有害な税の競争、人為的な利益移転、及び、デジタル化に関係するものを含むその他の租税に関する課題に対処する。我々は、可能な限り速やかな結果を期待する。我々は、マネーロンダリングやテロ資金、拡散金融その他の不正な資金の源泉およびその経路に対抗する。我々はまた、コルレス銀行関係の解消やその悪影響に対処する。
- 我々は、債務者と公的・民間の債権者双方による債務透明性と持続可能な貸付慣行の強化、及び、債務再編における既存の枠組みを活用した債権者間の協調の強化に共に取り組む。
我々は、より広範な世界的課題に立ち向かう上で協働することも不可欠であると認識する。我々は、パンデミック、サイバーリスク、気候変動や自然災害、エネルギー不足、紛争、移民、難民その他の人道上の危機がもたらすマクロ経済的な影響に対処し、これに対する抵抗力をつけようとする国々の、及び国際的な努力への支援を継続する。我々はまた、プライバシーとデータ保護及び分断化の問題から生じるものを含む関連課題に対処する一方、金融テクノロジーを活用するための協働を継続する。我々は、「2030 年の持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた努力を支援する。
IMFの業務
我々は、専務理事のグローバル政策アジェンダを歓迎する。IMFは、以下の事項の実現のために、その権限に則り、引き続き加盟国を支援し、他と協調していく。
加盟国が強靭性を強化し持続可能でより高い成長を確保することへの支援 :我々は、加盟国の状況に応じた政策提言と、必要な際の国際収支ニーズに対する資金支援の提供のためのIMFの努力を支持する。我々は、金融、為替レート、マクロプルーデンス、そして資本フロー管理政策の間の相互作用をより考慮した、より統合的な政策枠組みへのIMFの作業について議論することを期待する。我々は、新しいガバナンスフレームワーク、中央銀行のガバナンスに関する取組み、インフラ・ガバナンスや市場競争問題を含む構造改革に関する継続的な取組みに沿った、腐敗を含むガバナンスへの関与強化を歓迎する。
債務持続可能性と透明性の強化 :我々は、IMFと世銀による様々な角度からのアプローチの継続した実施を通して、公的・民間部門の債務に関する記録、監視、透明性の高い報告の改善に向けて、債務者と債権者と共に取り組むことを支持する。我々はIMFに対して、財政の枠組みの強化、債務管理能力の改善、及び更新された低所得国向け債務持続可能性フレームワークの実施を、加盟国と共に、引き続き取り組んでいくことを求める。我々は、市場アクセスを有する国々を対象とした債務持続可能性フレームワークや、IMFの債務上限ポリシーの見直しに期待する。
包摂性と機会を強化する政策の促進 :我々は、IMFによる、社会的支出の問題により体系的に関与する戦略の提案を期待する。我々は、ジェンダーと格差の問題のマクロ経済的な分析を歓迎する。我々は、脆弱国及び紛争被害国への関与の有効性の強化、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた途上国への分析とアドバイスの提供、のための更なる努力を支持する。我々は、「税に関する協働のためのプラットフォーム」の他のパートナーとの協働や、中期歳入戦略に関する経験の活用、能力が限られた国々における国内資金動員への努力を支援する各国の状況に合わせた努力等を通じた、国内資金動員の強化のために加盟国を助けるようIMFに求める。我々は、投資枠組みの改善のための「G20 アフリカとのコンパクト」の取組みへのIMFの継続した支援を歓迎する。
国際的な協力の向上 :我々は、政策アドバイスと貿易関連のマクロ経済分析を通じた、貿易におけるリスクの緩和と信認の向上のためのIMFの努力を支持する。我々は、対外ポジションの、厳格かつ公平で、多国間で一貫した評価を実施するための継続的な努力を歓迎し、対外調整プロセスにおける為替レートの役割についての更なる分析に期待する。他の機関と協働して、我々は、国際的な規制改革アジェンダにおけるIMFの貢献、国際課税問題におけるIMFの継続的な役割、及び不正な資金の流れの測定とその対処に関する作業に対するIMFの貢献を歓迎する。我々は、グローバル金融セーフティ・ネットの強化と、IMFの貸出ツールの要素の再検討や地域金融取極(RFAs)との協働の深化等を通じた、強靭な国際通貨金融システムの促進に向けた更なる努力を求める。
マクロ経済分析や政策アドバイスを通じた世界的な課題に対する世界的な解決の促進 :我々は、IMFによる、国境を越えた資金の流れと金融の安定性、包摂性、統合性に対するフィンテックの影響に関するバリ・フィンテック・アジェンダと整合的な取組み、金融監督強化とグッド・プラクティスの普及を通じてサイバーリスクの強靭性を高める各国の努力を支援する取組み、コルレス銀行関係の解消の原因と結果に対処し、各国がそれらに対処することを助ける取組みを、歓迎する。我々は、人口動態の変動に関して各国が直面している課題についての更なる作業を期待する。IMFは、その権限に則り、加盟国の気候変動の緩和・適応戦略の実施に関するガイダンスを引き続き提供する。我々は、他の機関と協働して、自然災害に対して脆弱な国、特に小国と低所得国における強靭性構築へのIMFの継続した支援を支持する。我々はまた、紛争や難民危機の影響を受けた国々へのIMFの継続した支援を支持する。
変化を牽引し支援するための政策ツールの調整 :我々は、2020年の包括的サーベイランス見直しや、金融セクター評価プログラムや複数通貨慣行ポリシーの見直し、データ基準イニシアティブとサーベイランス目的でのIMFへのデータ提供に関する取組みを通じた、サーベイランス向上に対するIMFの努力を歓迎する。我々は、プログラムデザインとコンディショナリティや譲許的ファシリティの見直し等を通じた貸付制度の改善と、サーベイランスや貸付と能力開発との統合を支持する。
IMF資金基盤とガバナンス
グローバル金融セーフティ・ネットにおけるIMF の中心的役割を維持すべく、我々は、強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMF にコミットしていることを再確認する。我々は、第15次クォータ一般見直しの進捗に関する最近の総務会への報告に留意する。我々は、IMF資金とガバナンス改革に関する作業を最優先事項として継続し、その結果を、第15次クォータ一般見直しに関する作業を完了する時、また遅くとも2019年年次総会までに報告するよう、理事会に要請する。我々は、2010年ガバナンス改革の完全な実施を求める。
加盟国に対して付加価値の高い支援を継続的に提供するため、我々は、質の高いスタッフを維持し、2020年の多様性基準を達成するための努力を強化することをIMFに求め、給与及び福利厚生の包括的な見直しの時宜を得た完結等を通じた機能強化に向けたIMFのイニシアティブに期待する。我々は、理事会におけるジェンダーの多様性の拡大を支持する。
次回IMFC会合は、2019年10月19日にワシントンD.C.にて開催される。
IMFコミュニケーション局
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