新しい経済環境と新しい多国間主義
IMF News, October 12, 2018
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- Published: October 12, 2018
概要
- スピーチは国際通貨基金(IMF)専務理事クリスティーヌ・ラガルドによる、2018年年次総会用の演説原稿。
- 主要メッセージは、「新しい経済環境」に対応するために、より包摂的で人間中心かつ結果重視の「新しい多国間主義」が必要であるということ。
- IMFはこの新しい多国間主義の中核的役割を担う組織であると位置づけている。
- スピーチは、マクロ経済的相互作用(通貨、財政、金融等)と、格差、テクノロジー、持続可能性という2つの側面から課題を整理。
マクロ経済課題と新しい多国間主義
- 貿易と成長
- 過去「70年以上」という長期にわたり成長と繁栄が続いた背景に貿易協力があるが、反動が生じている。
- IMFは、現状の貿易摩擦がエスカレートすると、「この先2年間で世界全体のGDPに1%近いマイナス影響を与えかねない」と試算している。
- 必要な対応は、貿易摩擦の沈静化に加え、世界貿易システムを「公平で強固なものに改革」すること(分裂ではなく修正)。
- グローバル・インバランスと債務脆弱性
- 巨額の経常赤字と経常黒字は表裏一体であり、赤字国と黒字国の協力が必要。
- IMFの「対外セクター報告」を参照している点を強調。
- 官民の債務を合わせると「過去最高の182兆ドル、世界GDPの224%相当」に達し、「2007年と比較して約6割も増加」していると指摘。
- 金融正常化が進むと新興市場で資本逆流を招くリスクがあり、こうした動きは国境を越えて加速する。
- 世界的金融セーフティネットと資源
- 世界的な金融セーフティネットが国内政策を補完する必要性。
- 資源の一部は地域金融取極(例:チェンマイ・イニシアティブ)で提供可能。
- IMFが必要な資源を確保するためには国際協力が必要。
- 協力の原則(IMF業務全般への適用)
- 貸付、サーベイランス(政策監視)、能力開発などIMF業務全てに協力の原則が適用される。
- 金融規制の改正、公的債務の透明性確保、資本フロー管理、資金洗浄防止など広範な分野に及ぶ。
21 世紀の課題と新しい多国間主義(格差・テクノロジー・持続可能性)
- 格差
- IMFの研究では「格差の緩和は、より力強く、持続可能な成長と結びついている」。
- 過度の格差は「成長から置き去りにされた人々、傷ついた地域社会、そして信頼の失墜」と結びつくと指摘。
- 格差対処には「政府、民間セクター、市民社会が共同」するパートナーシップが必要。
- 具体的取組例として、女性差別の根絶、労働市場改革、教育・研修、社会的保護システムの強化を挙げる。
- テクノロジー
- デジタル革命、バイオテクノロジー、ロボティクス、AIは新たな業種や雇用を生む一方、移行期に「破壊と剥奪」も起こす。
- フィンテックは「現在銀行を利用[1]できていない17億の人々」に金融サービスを提供する潜在力を持つが、金融の安定性と安全性維持のために慎重な管理が必要。
- デジタルはグローバル性を持つため、多国間での取組みが不可欠。会議で「バリ島フィンテック・アジェンダ」を世界銀行などと立ち上げたことを歓迎。
- 持続可能性とSDGs
- 気候変動対策は共通の優先事項であり、国境を越えた共同行動が必要。
- IMFの試算では、低所得国がSDGsを達成するために必要な追加支出は、医療、教育、水、インフラなど主要分野で「2030年まで毎年約5,200億ドル」の追加支出が必要と見積もられている。
- このギャップは国家間、民間セクター、ドナー、国際機関、慈善家のパートナーシップなしには埋められない。
- 取組みには資源利用の効率化、租税回避や脱税の抑制による歳入確保の強化、腐敗撲滅も含まれるべきと指摘。
- 新しい多国間主義の性格
- 多様な視点や声を取り入れ、包摂的で人間中心、効果的かつ説明責任を果たすもの。
- 排除から生じる緊張や気候変動が国境を問わない問題であることから、連帯は各国の利益にも適うと主張。
政策提言・推奨される行動
- 貿易摩擦の沈静化と世界貿易システムの改革(分裂ではなく修正)を目指す。
- 赤字国と黒字国の協調によるグローバル・インバランスの是正。
- 世界的金融セーフティネットの強化と、地域金融取極の活用(例:チェンマイ・イニシアティブ)。
- IMFの資源確保のための国際協力の推進。
- 貸付、サーベイランス、能力開発などIMF業務全域で協力の原則を堅持。
- 格差是正のための政府・民間・市民社会の協働、女性差別撤廃、労働市場改革、教育・研修・社会的保護強化。
- デジタル金融(フィンテック)普及の推進と同時に金融安定性・安全性の確保。
- SDGs達成のための追加資金動員(「2030年まで毎年約5,200億ドル」)と、租税対応、腐敗撲滅による歳入強化。
- 多様な声を取り入れる包摂的な多国間主義の推進。
結論
- 「行動する時には、つねに共通の利益を考えよ」(「バガヴァッド・ギーター」詩節3-20)という格言を引用し、共通の利益のために協力する重要性を強調。
- 新しい多国間主義は次世代の未来のためのものであり、若者たちの不安と希望に応えることが必要であると締めくくる。
国際通貨基金(IMF)専務理事 クリスティーヌ・ラガルドによる演説(2018年年次総会用原稿)