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好循環の構築に向けて

2017年6月7日

はじめに

 ザイン様、ご丁寧な紹介を賜り、ありがとうございます。

 欧州開発デーズにご招待いただき、またこのパネルをオックスファムと共同で開催する機会をいただいたことに対し、あらためて欧州委員会に感謝申しあげます。

このパネルの参加者は、IMFから参加するエイブ・セラシューを含め、すばらしい方々ばかりで、このパネルの議論が意義深いものとなることを確信しております。

開発デーズに参加し、私は各セッションのみならず会場内外に充満する創造的なエネルギーに感嘆いたしております。

今朝方、私は別途、女性のエンパワーメントと、子育てや出産休暇にかかる政策の改善を通じた経済変革の可能性についてお話ししました。午後のこのパネルでは世界の成長を促すうえで同じくらい重要なテーマについて議論します。すなわち、国内資源の活用です。

この二つのトピックの関連について思いを巡らしておりましたが、「風と共に去りぬ」の作者、マーガレット・ミッチェルの素晴らしい言葉を思い起こしました、「死、税、そして出産。どれをとっても都合のいい時期などはない。」

ミッチェル女史の言葉が正しいのはいうまでもありませんが、この三つはいずれも人の生涯における重要な要素でもあります。なかでも税金、そして税制の改善は、医療、教育、安全など、国の発展を加速させる上で信じられないくらい素晴らしい効果を発揮し得るものでもあります。.

そこで、ここではまずIMFが各国の能力開発のためにどのようにコミットしているかをお話ししたうえで、政府が安定した歳入を確保し、その活用を通じすべての人が共生できる経済を作っていくための戦略についてお話ししたいと思います。

1. IMF の能力開発へのコミットメント

IMFといえば、融資プログラムや世界経済の分析をする機関と認識されている皆さんが多いかもしれません。

あるいは、危機対応の機関として我々のことをご存知の方もおられるかもしれません。例えば、エボラ出血熱流行の際には3億8千万ドルの金融支援を行っています。

しかし、IMFは重要な三つ目の役割として、開発の使命を帯びています。すなわち、能力開発という役割です。

IMFは世界各国の政府と協力して、それぞれの国の経済政策と制度の近代化に取り組んでいます。

こうしたプロジェクトは成長を加速させ、雇用を創出し、強靭な経済を構築するうえで役立っています。

我々は様々な分野で能力開発プロジェクトを実施しています。コソボ中央銀行との協力による同国の金融システム近代化プロジェクトに始まり、経済学の無料オンラインコースを通じて3万人近い人々のトレーニングに貢献していることから、本日のイベントのテーマである効率的な税収確保のための方策に至るまで、広範な分野に及んでいます。

国内資源の動員と活用は、賢く行えば、強い経済を支える重要な要素となり、国家債務の持続性を維持しつつ緊要なニーズを満たすことを可能とします。

学校、病院、道路などへの新たな投資を通じ地域社会を強化できます。こうしたインフラの整備と人々の生活の質の向上を通じ、経済力が高まり、民間投資も呼び起こします。

市町村が活性化することで、税金が役立っていることを市民が実感すれば、その結果、インフラの改善と納税意識の向上と経済成長との好循環が生まれます。

多くの発展途上国にとって、歳入の拡大は2030年を達成期限とした「持続可能な開発目標」 を実現するための不可欠な要素であり、包括的な成長の実現にも寄与し得ます。

しかしながら、未だ歳入の伸びが弱く、経済・市民生活を向上させるうえで必要な資源が活用されないままに放置されている国もみられます。

IMFはこのようなときにこそ、その力を発揮できるのです。

2. 安定した歳入の確保

2016年中、我々は130以上の国々で、それぞれの国の歳入強化努力を支援しました。

我々の活動に対する加盟国の期待も高まり続けています。2016年中にIMFが実施した財政分野での能力開発支援プログラムのうち、半分が歳入管理と税制に関するものでした。今後はそうした努力をさらに強化し、特に発展途上国向けの活動に注力していく予定です。

財源面での支援なしに、我々がこのような活動を続けることはできません。EUの協力により、IMFのこうした活動が可能となっています。IMFが能力開発支援を行ううえでEUは二番目に重要なパートナーの地位を占めるにいたっており、我々はこの点に感謝しております。

ところで、税収の確保はどの程度重要な問題なのでしょうか。

途上国において確保される税収はおおむねGDPの10ないし20パーセントに止まります。これに対し、先進国での平均は40パーセント程度です。

IMFのスタッフによる研究によれば、途上国においては、GDPの15パーセントの税収を確保することができれば、安定した持続可能な成長の実現の可能性が高まることが分かっています

しかし、この水準を達成できていない国もあります。

ソマリアでは税収はGDPの2パーセント未満です。コンゴ民主共和国では約6パーセント、アフガニスタンとミャンマーでも7から8パーセントにすぎません。

しかし、いいニュースもあります。どうすれば事態を改善できるかがわかっています。

  • セネガル では、電子的な支払い手段を導入することで、徴税の仕組みを改革するプログラムの実施をIMFが支援しています。このシステムの導入により税収が増加し、不正の削減にも寄与しています。しかも、それだけで満足することはなく、2016年には首都ダカールでIMFとセネガル政府共催で、納税手続きの簡素化に向けた独創的な方法の開発を競う「ハッカソン」を開催しました。
  • モンゴル では、430の大企業からの税収が全体の約50パーセントを占めています。政府は税制強化のための支援を我々に要請し、IMFと政府は透明性とコンプライアンス向上に取り組みました。その結果、大口納税者の期限内申告比率はほぼ100パーセントを達成し、納税者の税務執行体制に関する信頼も向上しました.

多くのツールが利用可能で、それぞれの国に応じた対策が取れます。例えば税率を下げたり、脱税への対策を強めたり、付加価値税(VAT)を導入するなどです。

 目指すべきはより「多く」の税収を得ることではなく、税の徴収と支出の決定管理をより「賢く」 行うことです。

徴税能力の強化から支出にいたるまでの包括的なアプローチを皆様にもご議論いただけることを期待しています

結語

最後に、このカンファレンス全体に漲る協力の精神の重要性を強調したいと思います。

私たちはこの開発デーズに同じ思いを抱き、集まりました。すなわち、お互いの経験から学び、平和で豊かな未来を共に築こうとする決意です

私は、皆様とともにこの目的に向けて努力できることをうれしく思い、IMFが皆様方のパートナーとなれることを光栄に思います。 本パネルの議論が有意義で興味深いものとなることを祈念して私のご挨拶といたします。

ご清聴ありがとうございます。

IMFコミュニケーション局
メディア・リレーションズ

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