Typical street scene in Santa Ana, El Salvador. (Photo: iStock)

写真:Gopixa/iStock by Getty Images

IMF サーベイ・マガジン : 歴史的な改革により、クォータ財源が倍増、新興市場国・途上国のボイスは強化

2016年1月27日

  • 2010年に合意されたクォータ及びガバナンス改革を承認
  • 新興市場国の影響力を強化するパッケージ
  • この承認により第15次見直しに道筋がつく

日実施となったIMFの2010年のクォータ及びガバナンス改革により、IMF内における新興市場国及び途上国のボイス(発言権)と代表性が強化される。また、IMFの意思決定プロセスの正当性が向上し、将来の危機により適切に対応するための恒常的な資金が増すことになる。

IMFのクォータ及びガバナンス改革: 新興市場4カ国(ブラジル、中国、インド、ロシア)が、10大出資国入りをするのは初めてのこと(写真: IMFの旗)

IMFのクォータ及びガバナンス改革: 新興市場4カ国(ブラジル、中国、インド、ロシア)が、10大出資国入りをするのは初めてのこと(写真: IMFの旗)

IMFガバナンス

IMFのクリスティーヌ・ラガルド専務理事は「これらの真に歴史的な改革を批准した我々の加盟国を称える」と述べるとともに、より加盟国を代表する近代的なIMFにより「急激に変化している国際環境の中で、IMFが確実に加盟国のニーズにより適切に応えより適切にこれを表すこと」ができるようになるだろうと続けた。

同氏は「今日は重要な前進を成し遂げた日だが、IMFのガバナンス強化に向けた取り組みは継続されることから、これが最後の変化ではない」と付け加えた。

クォータ及びガバナンス改革の重要性

この歴史的な変化は、IMFにとり大きな前進を意味する。

第一に、この改革によりIMFのクォータ財源が大幅に強化され一段と効果的に危機に対応するための能力が高まる。IMF加盟188カ国のクォータ(加盟国が拠出する資本)の合計は、約2,385億SDR(約3,290億米ドル)から増え4,770億SDR(約6,590億米ドル)となる。

第二に、改革を通し世界経済で増大するダイナミックな新興市場国及び途上国の役割をより適切に反映させることで、IMFのガバナンスが強化される。クォータのシェアが、ダイナミックな新興市場国及び途上国、そして過大に評価されていた加盟国から過小に評価されていた加盟国に、それぞれ6%以上シフトする。結果、新興市場4カ国(ブラジル、中国、インド、ロシア)がIMFの10大出資国入りをすることになる。その他の10大出資国は、米国、日本、欧州主要4カ国(フランス、ドイツ、イタリア、イギリス)となっている。

また2010年の合意により、24人が構成する理事会も含めIMFの意思決定の有効性が向上する。はじめてIMF理事会で全選任理事制がとられることになり任命理事は廃止となる(現在は、5大クォータ出資国が理事を任命している)。

同時にIMFの最も貧しい加盟国のクォータシェア及び議決権は保護される。さらに、欧州先進国は、今年の秋に行われる次回の定期理事選挙までに理事会での総議席数を2議席減らすことにコミットしている。

次のステップ

こうした改革は、世界経済での主なシフトを反映している。2008年の改革措置を基に加盟国政府や外部の利害関係者との幅広い協議を反映させた2010年の改革は、特にダイナミックな新興市場及び途上国・地域の重要性と役割の増大という、世界経済の変貌する現実を考慮している。

以上に加え、2010年の改革の批准により、IMFがクォータの第15次見直しに着手する道が開かれた。第15次見直しは、IMF財源の規模と構成、及び加盟国のクォータシェアの配分を協議する機会となる。