経済部門間や地域間の格差が拡大する中、世界経済の回復が減速している
米国の債務上限問題が最近解決され、また、今年初めには米国とスイスの銀行部門の混乱を封じ込めるために当局が強力な対応をとったことにより、金融部門の混乱に関する当面のリスクは抑制されている。これによって、見通しに対する負のリスクは軽減された。しかし、世界経済の成長に対するリスクバランスは依然として下方に傾いている。インフレ率は高止まりしかねず、ウクライナにおける戦争の激化や極端な気象関連事象などさらなるショックが発生して、インフレ率がさらに上昇する可能性さえあり、その場合には、より緊縮的な金融政策が発動されるだろう。市場が中央銀行によるさらなる政策引き締めに適応する過程では、金融部門の混乱が再発しかねない。中国の回復は、未解決の不動産問題などを理由に減速し、国境を越えた負の波及効果をもたらす可能性がある。ソブリン債務問題はより広範囲の国々に拡大するかもしれない。上振れリスクとしては、インフレ率が予想より早く低下して、金融引き締め政策の必要性が低くなるほか、国内需要が再び底堅さを発揮する可能性がある。
大半の国では、金融の安定性を確保しつつ持続的なディスインフレーションを達成することが引き続き優先課題となる。そのため、中央銀行は物価の安定を回復し、金融監督とリスク監視を強化することに集中し続けるべきである。市場のストレスが顕在化する場合には、各国はモラルハザードの可能性を軽減しつつ迅速に流動性を供給しなければならない。また、財政調整の構成を、最も脆弱な層に的を絞った支援を提供できるようにするものとしつつ、財政バッファーを構築する必要もある。経済の供給サイドの改善を行うことは、財政健全化とインフレ率の目標水準へのより円滑な低下を促進するだろう。