地域経済見通し

アジア太平洋地域

2024年11月

経済成長強靭もリスク増大

アジア太平洋地域の短期的な見通しは、2024年と2025年に成長率が依然としてやや減速することが見込まれているが、IMFの4月の予測と比較してわずかに改善した。アジア太平洋地域における2024年の予想成長率は、期待を上回る上半期のパフォーマンスを主因として、4月時点の4.5%から4.6%に引き上げられた。世界経済成長のうち約60%がアジア太平洋地域からもたらされると見込まれる。2025年には、より緩和的な金融環境が経済活動を下支えすると見込まれており、成長率予測は4月の4.3%から4.4%へと小幅に上方改定された。インフレ率はアジア太平洋地域の大部分で低下している。同時に、地政学的緊張の高まりや、世界の需要の強さに関する不確実性、金融の不安定性が高まる可能性を反映する形で、リスクが増大している。人口構造の変化がますます経済活動へのブレーキとして作用していく見込みだが、貿易可能なサービス業などの生産性が高い部門への構造的な移行で、強固な成長を維持することが期待され

アジア太平洋地域の成長率予測

分析ノート

アジア太平洋地域の構造変革:過去と見通し

アジア太平洋地域は過去30年間、急速な成長と発展を遂げてきた。主な要因は、労働者が農業を離れてより生産性の高い部門で働くという構造変革であった。アジアでは歴史的に、製造業への再配分が特徴的だったが、過去30年間は、雇用の創出と成長の促進の両方において、サービス業がより大きな役割を果たしてきた。サービス業は、一段と大きな役割を果たすようになり、所得も増加するであろう。しかし、より生産性の高いサービスへ確実に移行するためには、人工知能(AI)を含む新しいテクノロジーに労働者が適応することを支援するなど、必要なスキルを身につけるための教育と訓練への投資がなくてはならない。また、経済を開放し、競争やサービス貿易を促すことも重要である。人口高齢化が成長の足かせとなることは避けられない。その影響を緩和するためには、生産性を上げ労働市場参加を増やさなければならない。