財政モニター

財政モニター

2022年4月

2022年4月 財政モニター

パンデミックから戦争へと移る中での財政政策

新型コロナウイルスのパンデミックに関連した不確実性が後退しつつあったまさにその時に、ロシアウクライナを侵攻した。不確実性は、パンデミックから戦争へと移りながら今も続いている。影響は各国間で異なる。物価が目標を上回ったり、予想外に上昇したりしたこともあり対GDP債務比率は下がったが、こうした効果は通常、一時的である。不確実性が高く各国間の格差が大きいため、各国の状況に適した機敏な財政政策対応が必要であるが、見通しがより明確になるにつれて調整する準備ができていなければならない。中央銀行が物価上昇を抑制するために金利を引き上げる中、財政政策は焦点を異例なパンデミック対策から転換する必要がある。エネルギーと食料の純輸入国である新興国と発展途上国市場が、国際価格の上昇の影響を最も受ける。こうした国の多くはすでに、パンデミックの後遺症に直面しており、新たな支出に充てる財政余地がほとんどない。政府は、危機の影響が最も大きい者や、優先的分野への支援に集中するべきだ。医療や食料、よりクリーンな資源を用いたエネルギー安全保障への投資を通じてレジリエンスを高めることが、より一層急務となっている。こうした目標を達成するための国際協力がかつてないほど重要だ。

 

財政モニター 2022年4月

第1章  パンデミックから戦争へと移る中での財政政策

本章では、ウクライナでの戦争や物価・金利の上昇、経済成長の鈍化、債務の脆弱性の高まりを要因とし不透明感が高まる中での財政政策の役割を検討する。パンデミックの後遺症があり戦争が展開する中で財政政策は、人道的危機と景気混乱に対処しつつ、見通しがより明確になるにつれて調整できるように柔軟であるべきだ。

第2章 税制に関する国際協調

各国が新型コロナのパンデミックによる落ち込みから包摂的でグリーンな回復を遂げようとするなか、また、エネルギー価格上昇の直近の影響への対応策を計画するなか、世界は税収を確保し、格差を是正し、温室効果ガスの排出を削減するという共通の課題に直面している。各国の税政策は他国への波及効果を考慮しなければならない。一国の行動が他国に影響するのだ。本章では、税制に関する国際協調により、①多国籍企業の利益移転と各国間の税率引き下げ競争を減らし、②脱税対策として情報の透明性を強化することで税務執行を改善し③地球温暖化を抑える方法を模索する。現在のエネルギー危機は、化石燃料への依存を減らすため主要排出国が協調する必要性を一層高めている。短期的な対応に追われ、排出削減のための信頼性の高い中期計画を設ける努力を怠ってはならないのだ。