アジアにおける次の成長フロンティア

2025年3月4日

加藤財務大臣、本日は私たちを温かく迎えて下さりありがとうございます。また、植田総裁が参加して下さったことにも感謝の意を表したいと思います。現場でご一緒できなくて非常に申し訳ございません。しかし、テクノロジーのお蔭でバーチャルで参加することができました。

東京スカイツリーに行ったことがある人は、ここから街の最高の景色を眺められることをご存知でしょう。そして、日本の多くのものと同様に、それは工学の傑作です。東京のスカイラインを見渡すと、ブレトンウッズ体制が設立されてから80年の間に、東京の街、そして国全体が、どれほど変わったかを想像するのは難しいものです。

第2次世界大戦後、日本はインフラと製造業に大規模な投資をし、抜本的な改革を導入しました。これにより、日本は経済大国への道を歩むことになりました。 

日本の成功に触発され、アジアの他の国々も後に続きました。今日、この地域の世界成長への貢献度は60%を超えており、世界でも非常に革新的な大企業の本拠地となっています。

もちろん、アジアは非常に多様な大陸であり、先進国と新興市場国、フロンティア市場国、小さな島国が混在しています。人口構成と所得レベルも異なります。

しかし、地域全体において、開放性と経済関係の深化が、各国の成功に不可欠でした。

しかし、世界は変わりつつあります。多くの国が成長見通しの鈍化に直面しており、多額の公的債務を抱えています。新型コロナウイルスのパンデミックと最近の地政学的な動向を背景に、供給の安全保障の重要性が注目されています。貿易は、世界経済成長のかつてのような原動力ではなくなりました。そして私たちは、AIの急速な進歩や、資本の流れおよび貿易のパターンの変化など、大規模な変革の真っ只中にいます。 

このような背景から、世界各国の政府は優先事項を変えています。米国の新政権は、貿易、税制、公共支出、規制緩和、デジタル資産に関する政策を急速に再形成しています。また、他の政府もアプローチを考え直し、政策を調整しています。

将来の成長

アジアの国々はどのように適応すべきでしょう。3つの機会を強調します。

第1に、サービス主導型の成長へのシフトです。モノの貿易が横ばいになる一方で、サービスの貿易は急増しています。実際、すでにこの地域の労働者の約半数がサービス業に従事しており、1990年のわずか22%から増加しています。

経済学者は従来、サービス業は製造業よりも生産性が低いと考えてきました。私たちの研究はそうではないことを示唆しています。金融サービス業におけるアジアの労働生産性は、製造業より4倍高く、ビジネスサービス業より2倍高いのです。

ふたつ目は、デジタル化とAIです。同地域のデジタル製品・サービスの需要は急速に増えており、域内のGDPを上回るペースで伸び続ける勢いです。日本の楽天、中国のアリババグループ、インドネシアのGoToグループは今や、電子商取引大手の米アマゾンや米ウォルマートに匹敵します。

AIの開発では、日本と中国が先を争い、韓国とシンガポールが僅差で後に続いています。これは、生産性を大きく押し上げる可能性があります。例えば、シンガポールでは、AIによって職の40%において生産性が上がり得ると推定されています。同国は現在、いくつかのデジタル経済協定を締結しており、この地域のデジタル企業がより簡単に接続・データ共有できるようになっています。

そこで、3つ目のポイントである、地域協力と貿易の拡大についてお話しします。一見すると、世界はまとまりがなくなってきているように見えるかもしれません。しかし、同地域を見ると、各国がこれに前向きに取り組んでいます。

過去40年間で、アジアの域内貿易は43%増えました。今日、アジアの貿易の半分以上が域内貿易です。

この傾向は、外国直接投資(FDI)についても言えます。例えば、アジアの国々から日本へのFDIは、日本のテクノロジー部門の市場機会が拡大するにつれて、過去10年間でほぼ倍増しました。

サービス業への移行、デジタル化とAI、地域統合の拡大を合わせて、成長を押し上げることができます。しかし、これらの機会を生かすためには、この地域は国内の展開と世界的な変化を慎重に舵取りする必要があります。

IMFの役割

ここがIMFの出番です。私たちは、加盟国の信頼できるパートナーとなるよう努め、国別のアドバイスを提供し、世界経済の安定を守ります。私たちの仕事は、経済分析、政策助言、融資、能力開発に及びます。

また、世界経済が変化するにつれて、私たちも進化してきました。1970年代の固定為替レートの管理から、各国の経済・金融政策の積極的なサーベイランス、波及効果のより体系的な取り組みなどが挙げられます。

最近では、資本フロー管理と外国為替介入に関する考え方を変えたほか、融資ツールキットを改良して、新興市場国に合わせたより柔軟なツールを追加しました。

その他、日本の支援が大きな支えとなり、能力開発を中心に低所得国への支援を増やしているほか、地域技術支援センターを通して世界での存在感を強めています。

IMFの未来について考える際、日本が深く関与して下さっていることに感謝しています。本日の議論は、その重要な一環です。 

私とIMFのチームは、以下の点について、皆さんのアイディアや考えに強い関心を持っています。

  • 加盟国、中でも最も脆弱な国々を中心に、経済のレジリエンスを築くためIMFがどのように支援するのが最善か。
  • ASEAN、太平洋島嶼国、中規模経済国、より大きな経済国などのグループとの戦略的関与を熟考することで、地域協力を深める各国の取り組みを支援するために、私たちがアドバイスをどのように調整すべきか。そして
  • 国際金融セーフティネットをどのように強化するかです。IMFは、加盟国のレジリエンスを支えるために、IMFの融資制度をさらに改善する方法を評価しています。また、危機の予防と対応能力を強化するために、同地域との取極めにも注目しています。

私たちは経験から、改革が難しいことを知っています。一方、各国をより強固で持続的な成長へと導き、より安定・繁栄した世界経済を実現する力を秘めていることも知っています。

この道のりにおいて、IMFを頼りにして下さい。

ナイジェル・クラーク副専務理事とその他の私たちのチームメンバーは、今日、生産的な議論に参加できることを楽しみにしています。成果に期待しています。

ご清聴ありがとうございました。

IMFコミュニケーション局
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