第50回国際通貨金融委員会(IMFC)議長声明

2024年10月25日

1024日及び25日にワシントン D.C.で行われた第50IMFC会合において、いくつかのIMFCメンバーは、ロシアとウクライナ、イスラエル、ガザ、レバノン、その他の場所についての現在の戦争及び紛争が世界的なマクロ経済・金融に与える影響について議論した。IMFCメンバーは、全ての国が国連憲章の目的及び原則に全体として整合的な方法で行動しなければならないことを再確認した。IMFCメンバーは、しかし、IMFCが、他のフォーラムで議論されている地政学的及び安全保障問題を解決するフォーラムではないことを認識した。

IMFCメンバーは、以下の文言に合意した。

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世界経済にとって、ソフトランディングを確保し、現在の低成長かつ重債務の道筋から抜け出すことは、政策の優先課題である。我々は、IMFのサーベイランス、融資手段、並びに能力開発の強化と、代表性の更なる向上に向けたIMFの努力を歓迎する。将来を見据え、我々は世界の繁栄を促進し、共通の課題に対処するための多国間協力に引き続きコミットする。

  1. 世界経済はソフトランディングの方向に近づいている。経済活動は、世界経済の成長が安定し、インフレが鈍化し続けていることにより、強靱であることが明らかとなった。しかしながら、これは重要な国家間の差異の広がりを覆い隠している。不確実性は引き続き顕著であり、いくつかの下方リスクが高まっている。進行中の戦争及び紛争は世界経済に大きな負担を課し続けている。中期的な成長の見通しは依然として弱く、世界の公的債務はかつてない水準に到達している。
  1. 我々は、低成長かつ高債務の道筋から離れ、その他の中期的な課題に対処するための我々の改革努力を強化しつつ、ソフトランディングを更に確実にすることに努める。財政政策は、債務の持続可能性を確保し、バッファーを再建するため、必要に応じて財政再建に転換するべきである。財政再建は、脆弱層を守り、また成長を促進するような公的・民間投資を支援しつつ、信頼に足る中期計画と制度的枠組みに支えられるべきである。金融政策は、中央銀行のマンデートと整合的な形で、インフレが持続性を伴う形で目標に戻ることを確保し、引き続き、データに基づき、よくコミュニケーションがとられなくてはならない。金融セクター当局は、不動産市場を含む銀行及びノンバンクのリスクを引き続き注意深くモニタリングするべきである。我々は、国際的に合意された改革の適時の完了並びに実行を通じたものを含め、金融規制・監督の強化に引き続き取り組み、リスクを緩和しつつ、金融及び技術革新の恩恵を活用する。我々は、経済活動に対する拘束的な制約を緩和し、生産性を向上させ、労働市場への参加を増加させ、社会の一体性を促進し、気候移行及びデジタル移行を支援するために、よく調整され、順序付けられた、成長を促進するような構造改革を追求する。
  1. 我々は、国際通貨システムが円滑に機能することを確保しながら、世界経済の強靭性を改善し、繁栄を築くため、国際協力に引き続きコミットする。我々は、2021年4月になされた、為替レート及び過度のグローバル・インバランスへの対処に関する我々のコミットメント並びにルールに基づく多国間貿易システムに関する我々の声明を改めて強調するとともに、保護主義的措置を回避するという我々のコミットメントを再確認する。
  1. 我々は、各国が改革を実施し、債務の脆弱性及び流動性問題に対処する中、これらの国々を継続して支援する。我々は、G20 の「共通枠組」(CF)及びそれ以外の下での債務措置の進捗を歓迎する。我々は、予測可能で、適時に、秩序立ち、かつ連携した方法で「共通枠組」の実施を強化することを含め、効果的、包括的かつ体系的に国際的な債務脆弱性に対処するとともに、債務の透明性を向上することにコミットする。我々は、公的債務にかかるグローバルラウンドテーブルにおける、債務の脆弱性と債務再編の課題に対処する方法についての更なる作業に期待する。我々は、IMFと世銀が、持続可能な債務を負いながらも流動性問題を抱える国々を支援するための提案を更に発展させることを奨励する。
  1. 我々は、専務理事のグローバル政策アジェンダ(GPA)で示されている政策の優先事項を歓迎し、クリスタリーナ・ゲオルギエヴァ氏の 2 期目の 5 年間の任期の開始を歓迎する。
  1. 我々は、加盟国がリスクを評価し、政策・組織的枠組みを強化し、強靭性を向上させ、債務持続可能性を確保し、包摂的で持続可能な成長の促進のためにマクロ金融・マクロ構造政策を調整することを助けるべく、各国の状況に合わせた助言を行うことに焦点を当てる IMF のサーベイランスを支持する。我々は、将来のサーベイランスの優先課題を設定する包括的サーベイランス見直しに期待する。
  1. 我々は最近の融資手段の改革を歓迎する。我々はPRGTの自立的な持続可能性を確保する一方で、低所得国が、国際収支上のニーズに対処することを、その脆弱性に留意しつつ支援するためのIMFの能力を強化することを目指した、PRGT の制度及びその資金調達に関する見直し完了を歓迎する。我々は、チャージ・サーチャージの意図されたインセンティブを維持し、また、IMF の財務健全性を保護しつつ、借入国にとってのIMF融資に係る財政コストを軽減させるチャージ・サーチャージ見直しを歓迎する。我々は、気候行動に係る世銀との、そしてパンデミックへの備えに係る世銀及び国際保健機関との、協力強化を歓迎する。これは、強靭性・持続可能性トラスト(RST)を通してIMFの支援の効果を更に高めることとなる。我々は、 一般資金勘定(GRA)アクセスリミット見直し、プログラムデザイン及びコンディショナリティ見直し、短期流動性ライン見直し、そしてRSTの包括的見直しに期待する。我々は、法的にそれを模索することが可能な国に、SDRの準備資産としての地位を保持しつつ、MDBsを通じたものを含む自発的なSDRチャネリングへの参加を引き続き呼び掛ける。
  1. 我々は、能力開発(CD)を強化し、適切な資金を確保するための、IMF の努力を支持する。我々は国内資金動員イニシアティブに基づく、世界銀行と共同した進行中の取組を歓迎する。
  1. 我々は、グローバル金融セーフティ・ネットの中心にあり、強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMF への我々のコミットメントを再確認する。我々は、第 16 次クォータ一般見直しのもとでのクォータ増資への同意ならびに関連した新規借入取極(NAB)の調整についての国内承認をすでに得ている、あるいは今年 11 月中旬までに得るべく取り組んでいる。クォータ増資への速やかな同意を確保する上で遅延が生じた場合に IMF の融資能力を維持するためのセーフガードとして、二国間借入取極の貸付国は、IMFの二国間借入へのアクセスを維持するための過渡的な取極に関する承認を確保するため取り組んでいる。我々は、最も貧しい加盟国のクォータシェアを守りつつ、加盟国の世界経済に占める相対的な地位をより良く反映させるための、クォータシェアの調整の緊急性と重要性を認識する。我々は、第 17 次クォータ一般見直しの下で、新たなクォータ計算式を通じたものを含め、更なるクォータシェアの調整に向けた指針としての可能な複数のアプローチを 2025 年 6 月までに策定するための 理事会における進行中の取組を歓迎する。
  1. 我々は、サブサハラ・アフリカ地域の発言権と代表制を強化する、理事会における同地域のための25番目の新たな理事を歓迎する。我々は、また、リヒテンシュタインを新しい加盟国として歓迎する。我々は、スタッフの、加盟国を支援する質の高い取組と献身に感謝する。我々は、スタッフの多様性と包摂性を向上させるための更なる努力を奨励する。我々は、理事会におけるジェンダーの多様性を強化するというコミットメントを改めて強調し、理事会の指導的な地位に占める女性の数を増やすための自発的目標を達成するよう引き続き取り組む。
  1. 我々は、IMF80周年におけるIMFへの強固なコミットメントを改めて強調するとともに、IMFが将来の課題に対応するために、そのマンデートに沿って、パートナー及び他のIFIsとの協力の下、十分な機能が備えられ続けることを確保するための方法に関する、次回の会合における更なる議論に期待する。我々は、我々の代理級がこの議論に備えることを求める。
  1. 次回IMFC会合は、2025年4月に開催される予定である。

 

国際通貨金融委員会

 参加者一覧

2024年10月25日(金) ワシントンDC

議長

ムハンマド・アルジャドアーン、財務大臣、サウジアラビア王国

専務理事

クリスタリナ・ゲオルギエバ

委員会

アイマン・アルサヤリ、総裁、サウジアラビア中央銀行(ムハンマド・アルジャドアーン、財務大臣、サウジアラビア王国-代理)

ムハンマド・ビン・ハディ・アル・フッセイニ、財務大臣、アラブ首長国連邦

アントワーヌ・アルマン、経済・財務・産業大臣、フランス共和国

ルイス・カプート、経済大臣、アルゼンチン共和国

ジム・チャーマーズ、財務大臣、オーストラリア

カルロス・クエルポ、経済・貿易・企業大臣、スペイン

クリスティア・フリーランド、副首相兼財務大臣、カナダ

ジャンカルロ・ジョルゲッティ、経済・財務大臣、イタリア

フェルナンド・アダジ、財務大臣、ブラジル

エールコ・ハイネン、財務大臣、オランダ

ロバート・ホルツマン、総裁、オーストリア国立銀行

加藤勝信、財務大臣、日本

カリン・ケラーズッター、財務大臣、スイス連邦

レセチャ・クガニャゴ、総裁、南アフリカ準備銀行

クリスティアン・リントナー、財務大臣、ドイツ連邦共和国

マエス・モイシ、経済・参画大臣、ガボン共和国

宣昌能、副総裁、中国人民銀行(潘功勝、総裁、中国人民銀行-代理)

レイチェル・リーブス、財務大臣、英国

イワン・チェベスコフ、財務副大臣、ロシア連邦(アントン・シルアノフ、財務大臣、ロシア連邦-代理)

ニルマラ・シタラマン、財務大臣、インド共和国

セタプット・スティワートナルプット、総裁、タイ銀行

サラー・エディヌ・タレブ、総裁、アルジェリア中央銀行

トリグヴェ・シュラーグスヴォル・ヴェードゥム、財務大臣、ノルウェー王国

ジャネット・イエレン、財務長官、アメリカ合衆国

 

オブザーバー

アグスティン・カルステンス、総支配人、国際決済銀行(BIS)

ムハンマド・ビン・ハディ・アル・フッセイニ、議長、合同開発委員会(DC)兼財務大臣、アラブ首長国連邦

クリスティーヌ・ラガルド、総裁、欧州中央銀行(ECB)

パオロ・ジェンティローニ、経済担当欧州委員、 欧州委員会(EC)

クラース・クノット、議長、金融安定理事会 (FSB)兼総裁、オランダ中央銀行

リチャード・サマンズ、調査局長、国際労働機関(ILO)

マティアス・コーマン、事務総長、経済協力開発機構(OECD)

モハナッド・アルスワイダン、経済アナリスト、石油輸出国機構 (OPEC)

アフナ・エザコンワ、事務次長補兼国連開発計画(UNDP)総裁補、国際連合(UN)

ペネロピ・ホーキンズ、担当役員兼債務開発金融部、国連貿易開発会議 (UNCTAD)

アジェイ・バンガ、総裁、世界銀行(WB)グループ

ンゴジ・オコンジョ・イウェアラ、事務局長、世界貿易機関 (WTO)

 

 

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