第49回国際通貨金融委員会(IMFC)議長声明(仮訳)
2024年4月19日
議長:ムハンマド・アルジャドアーン、財務大臣、サウジアラビア王国
IMFCメンバーは、ウクライナにおける戦争、ガザにおける人道危機、紅海における海運上の混乱を含む、現在の戦争や紛争による、世界経済へのマクロ経済面、金融面での影響について議論した。IMFCは地政学的・安全保障上の問題を解決するフォーラムではなく、これらの問題は他のフォーラムで議論されることを認識しつつ、IMFCメンバーは、こうした状況は世界経済に著しい影響を与えることを認識した。今日の時代は戦争や紛争の時代であってはならない。
****
IMFCは、ナディア・カルビーニョ氏のIMFC議長としてのリーダーシップに深い感謝を示し、モハメド・アルジャドアーン財務大臣を新たな議長として歓迎する。
- 世界経済の軟着陸が近づきつつあると考えられる。経済活動は、世界の多くの地域で予想以上に堅調であることが明らかとなったものの、国によってばらつきがある。しかし、中期的な世界経済の成長見通しは依然として弱い。進行中の戦争及び紛争は世界経済に大きな負担を課し続けている。供給ショックの巻き戻しと、金融引締めの効果により、ほとんどの地域でインフレ率が低下してきたが、インフレ率の持続性には注意が必要である。見通しに対するリスクは現在概ねバランスした状況にあるものの、インフレ率と金利、資産価格と金融安定、財政政策の動き、地政学的動向の短期的な道筋に左右される下振れリスクは残っている。世界経済はまた、気候変動、債務脆弱性の増大、拡大する格差、地経学的分断のリスクによるものを含む、構造的な課題にも直面している。
- こうした中、我々の政策の優先課題は、包摂的で持続可能な成長を促進しつつ、物価の安定を達成し、財政の持続可能性を強化し、金融の安定を守ることである。我々は、最も脆弱な人々を守り、成長を促進する投資を保護しつつ、各国固有の状況に注意深く応じた行動をとりながら、財政バッファーの再構築を進めていく。中央銀行は引き続き、それぞれのマンデートと整合的に、物価の安定を達成することに強くコミットしており、負の波及効果の抑制に資するよう、政策目的について明確に意思疎通を行いつつ、データに基づいて、政策を引き続き調整する。中央銀行は、不動産市場を含む銀行及びノンバンク双方のリスクをモニタリングする上で、監督・規制当局と連携している。我々は、適切な場合には、金融部門、特にノンバンク金融機関における、データ、監督及び規制のギャップに引き続き対処し、また、システミックリスクを緩和するためのマクロプルーデンス政策手段を実施する用意もある。我々は、経済活動に対する拘束的な制約を緩和し、生産性を向上させ、労働市場への参加を増加させ、社会の一体性を促進し、グリーン及びデジタル移行を支援するために、的を絞り、適切に順序付けられた、供給力を向上させる構造改革を加速させる。
- 我々は、世界経済と国際通貨システムの強靭性を向上させるための国際協力の重要性を強調する。我々は、各国固有の状況を考慮しつつ、適切な場合には、気候及び、人工知能を含むデジタルに関する移行を支援するために共同で行動する。我々は、為替レート、過度のグローバル・インバランスへの対処及びガバナンスに関する我々のコミットメント、並びに2021年4月になされた、ルールに基づく多国間貿易システムに関する我々の声明を再確認し、保護主義的措置を回避するという我々のコミットメントを再確認する。我々はまた、グローバル金融セーフティ・ネットを強化し、国際的な債務脆弱性に対処するために引き続き協働する。我々は、脆弱国が脆弱性及び資金ニーズに対処するための改革を実施する中、これらの国々を継続して支援する。
- 我々は、専務理事のグローバル政策アジェンダ(GPA)で示されている政策の優先事項を歓迎し、IMFが、そのマンデートに沿って、他の国際機関との協働を活用しつつ、これらの課題に取り組むことを期待する。
- 我々は、加盟国がリスクを評価し、政策・組織的枠組を強化し、バッファーの再構築と包摂的で持続可能な成長の促進のためにマクロ金融・マクロ構造的政策を調整し、経済的強靭性を強化するため、各国の状況に合わせた助言を行うことに焦点を当てるIMFのサーベイランスを支持する。我々は、IMFのマンデートに沿って、現在世界経済を再構築している変革的なトレンドに関連するリスク及び脆弱性を評価することの重要性を確認する。
- 我々は、グローバル金融セーフティ・ネットの中心にあり、強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMFへの我々のコミットメントを再確認する。第16次クォータ一般見直しの完了は、IMFのクォータ資金を50%増加させ、クォータを基礎とするIMFの性質を強化し、ショックを受けやすい世界においてグローバル金融の安定を守るための能力を強化する。我々は、今年11月中旬までにクォータ増資に同意するための国内承認を得るべく迅速に取り組んでおり、新規借入取極(NAB)参加国は、NABの規模の縮小のために、同じ期限までに国内承認を得るべく取り組んでいる。クォータ増資への速やかな同意を確保する上で遅延が生じた場合にIMFの融資能力を維持するためのセーフガードとして、二国間借入取極の参加国は二国間融資へのアクセスを維持するための過渡的な取極に関する国内承認を確保するため取り組んでいる。我々は、最も貧しい加盟国のクォータシェアを守りつつ、加盟国の世界経済に占める相対的な地位をより良く反映させるための、クォータシェアの調整の緊急性と重要性を認識する。 したがって、我々は、理事会に対し、第17次クォータ一般見直しの下で、新たなクォータ計算式を通じたものを含め、更なるクォータシェア調整に向けた指針としての可能な複数のアプローチを2025年6月までに取りまとめるよう取り組むことを求める。
- 我々は、加盟国が国際収支上の問題に対処し、経済的安定及び包摂的な成長を達成することを支援するために、資金支援を提供するというIMFの重要かつ触媒的役割を認識する。IMFは、低所得国(LICs)にとっての強力なパートナーであり続けるべきであり、このため、我々は、内部資金の活用や融資制度の改革を含む全ての方策を追求することによって、LICsの国際収支上のニーズを満たし、貧困削減・成長トラスト(PRGT)を持続可能なものとすることを目指し、PRGTの制度及びその資金調達に関する見直しに期待する。我々はまた、気候変動や将来のパンデミックに対する加盟国のマクロ経済面の強靭性の更なる強化を支援する、強靭性・持続可能性トラスト(RST)の中間見直しに期待する。我々は、経済がより強固な加盟国の自発的な貢献に感謝するとともに、IMFの譲許的ファシリティとRSTに対する更なる幅広い貢献を奨励する。さらに、我々は、サーチャージ・ポリシーの見直し、一般資金勘定のアクセスリミットの包括的な見直し、プログラムデザイン及びコンディショナリティの見直しの開始に期待する。
- 我々は、IMFが、各国が債務脆弱性に確実に取り組むことができるよう支援することを支持する。我々は、G20の「共通枠組」(CF)及びそれ以外の下での債務再編の進捗を歓迎する。我々は引き続き、予測可能で、適時に、秩序立ち、かつ連携した方法で、「共通枠組」の実施を強化することを含め、効果的、包括的かつ体系的に国際的な債務脆弱性に対処するとともに、債務の透明性を向上することにコミットする。我々は、債務再編を促進する方法について共通の理解を促進するための、公的債務にかかるグローバルラウンドテーブルにおける現在進行中の作業を歓迎するとともに、IMF及び世界銀行の低所得国向け債務持続可能性フレームワークの見直しに期待する。
- 我々は、能力開発(CD)を強化し、適切な資金を確保するための、IMFの継続的な努力を支持する。我々は、公的財政に関するCDの増大する需要に対応するための、グローバル公的財政パートナーシップの立ち上げを歓迎するとともに、世界銀行との協働による、国内資金動員イニシアティブの進展を支持する。
- 我々は、サブサハラ・アフリカの発言権と代表性を強化し、理事会における地域の代表性の全体的なバランスを向上させるため、今年11月、サブサハラ・アフリカのためにIMF理事会に新たに設けられる25番目の理事を迎えることを期待する。我々は、2022-2023年度多様性・包摂性レポートで特定された固有の課題に対応して、新規・既存の優先分野を支援する人材を惹きつけ、育成し、スタッフの多様性及び包摂性を更に向上させるための、IMFの更なる努力を支持する。我々は、理事会でのジェンダーの多様性を強化するコミットメントを再確認し、理事会において指導的な地位を占める女性の数を増加させるための、新たに設定された自発的目標を歓迎し、目標達成のための行動をとることに合意する。
- 我々は、クリスタリーナ・ゲオルギエヴァ氏のIMF専務理事在職期間中の献身的な貢献に謝意を表し、2期目の5年間の任期を務めるよう選出されたことを歓迎する。
- 次回IMFC会合は、2024年10月に開催される予定である。
国際通貨金融委員会
参加者一覧
2024年4月19日(金)・ ワシントンDC
議長
ムハンマド・アルジャドアーン、財務大臣、サウジアラビア王国
専務理事
クリスタリナ・ゲオルギエバ
委員会
アイマン・アルサヤリ、総裁、サウジアラビア中央銀行
ルイス・カプート、経済大臣、アルゼンチン共和国
ジム・チャーマーズ、財務大臣、オーストラリア
カルロス・クエルポ、経済・貿易・企業大臣、スペイン
クリスティア・フリーランド、副首相兼財務大臣、カナダ
ジャンカルロ・ジョルゲッティ、経済・財務大臣、イタリア
フェルナンド・アダジ、財務大臣、ブラジル
ロバート・ホルツマン、総裁、オーストリア国立銀行
ジェレミー・ハント、財務大臣、英国
カリン・ケラーズッター、財務大臣、スイス連邦
レセチャ・クガニャゴ、総裁、南アフリカ準備銀行
フランソワ・ビルロワドガロー、総裁、フランス銀行(ブリュノ・ルメール、経済・財務・復興大臣、フランス共和国―代理)
クリスティアン・リントナー、財務大臣、ドイツ連邦共和国
マエス・モイシ、大臣、ガボン共和国
潘功勝、総裁、中国人民銀行
リーッカ・プラ、財務大臣、フィンランド
アントン・シルアノフ、財務大臣、ロシア連邦
シャクティカンタ・ダス、総裁、インド準備銀行(ニルマラ・シタラマン、財務大臣、インド-代理)
アリサラ・マハサンダナ、副総裁、タイ銀行(セタプット・スティワートナルプット、総裁タイ銀行―代理)
鈴木俊一、財務大臣、日本
サラー・エディヌ・タレブ、総裁、アルジェリア中央銀行
ステーフェン・ファン・ワイエンバーグ、財務大臣、オランダ王国
ジャネット・イエレン、財務長官、アメリカ合衆国
オブザーバー
アグスティン・カルステンス、総支配人、国際決済銀行(BIS)
ムハンマド・ビン・ハディ・アル・フッセイニ、議長、合同開発委員会兼財務大臣、アラブ首長国連邦
クリスティーヌ・ラガルド、総裁、欧州中央銀行(ECB)
ヴァルディス・ドムブロフスキス、執行副委員長、欧州委員会(EC)
クラース・クノット、議長、金融安定理事会 (FSB)兼総裁、オランダ中央銀行
ローラ・トンプソン、事務局長補、国際労働機関 (ILO)
クレア・ロンバーデリ、チーフエコノミスト、経済協力開発機構(OECD)
ユルグン・シュピツィ、シニアリサーチアナリスト、石油輸出国機構 (OPEC)
アヒム・シュタイナー、国連開発計画(UNDP)総裁、国際連合
レベッカ・グリンスパン、事務局長、国連貿易開発会議 (UNCTAD)
アジェイ・バンガ、総裁、世界銀行グループ(WB)
ンゴジ・オコンジョ・イウェアラ、事務局長、世界貿易機関 (WTO)
IMFコミュニケーション局
メディア・リレーションズ
プレスオフィサー:
電話:+1 202 623-7100Eメール: MEDIA@IMF.org