「中国の持続的な経済成長を後押しする」
2024年3月24日
ご来賓の皆様、早上好!世界経済と中国にとって重要な辰年を迎えるにあたり、中国の継続的な発展に関する議論に参加すべく、私を招待してくださった主催者の皆さまに感謝申し上げます。
世界経済
世界は今後1年間、インフレ率を低下させつつ、成長をプラス圏にしっかりと維持するソフトランディングを確保するために、金融政策と財政政策を慎重に調整する必要があります。多くの中央銀行は、データに基づいて、いつ、どの程度の利下げを行うかを決める難しい課題を抱えています。ディスインフレと成長のペースが国によって異なるため、もはや他国から手がかりを得ることはできません。
また、今年はほとんどの国の財政当局にとって困難な年となるでしょう。債務を削減し、バッファーを再構築するために財政再建を進めると同時に、経済のデジタルトランスフォーメーションとグリーントランスフォーメーションに資金を充てる必要があります。
幸いなことに、世界経済は過去数年間のショックに対して驚くほどレジリエンスがあることが明らかになりました。 このレジリエンスは、大半の先進国と新興市場国においてマクロ経済のファンダメンタルズが強固であることと、個人消費と政府支出が堅調であることが大きな要因です。労働市場は持ちこたえ、サプライチェーンは正常化しました。
したがって、世界的に金利が上昇したにもかかわらず、今年と来年は成長率が3%を超えると見込んでいます。インフレ率は多くの国で目標を上回っていますが、引き続きペースが和らいでいます。ここアジアでは、インフレ率が他の地域ほど上昇せず、より速く低下しているため、状況がやや異なります。その結果、金利は他地域ほど上昇していません。
しかし、中期的には、世界経済の成長率は3%程度になり、歴史的な水準と比べて低くなる見込みです。コロナ禍前の10年間の年平均は3.8%でした。 生産性の伸びの低さと債務水準の高さは、新興市場国と発展途上国を中心に、すべての国に課題を突きつけています。 また、地政学的な緊張は、過去数十年にわたって成長の原動力となってきた貿易と資本の流れに影響します。
幸いなことに、デジタルトランスフォーメーションとグリーントランスフォーメーションは、生産性の伸びを後押しし、生活水準を向上させる機会となります。抜本的な構造改革は、起業家精神、イノベーション、経済パフォーマンスの土台を強化することができます。
中国:質の高い成長の新時代
中国に注目すると、2023年はコロナ危機後の力強い回復が見られ、成長率は5%を超えています。
中期的には、中国は引き続き世界経済の成長に大きく貢献します。生産性の伸びの弱さと人口高齢化が成長に影響する要因である一方で、大きなチャンスもあります。
中国は、過去にうまくいった政策に頼るか、質の高い成長の新時代に向けて政策を一新するか、という分岐点に立つでしょう。
IMFの分析によると、中国は市場志向の包括的な改革パッケージを導入することにより、現状維持のシナリオよりもかなり速いペースで成長する可能性があります。この追加の成長により、今後15年間で実体経済が約20%拡大します。今日の基準で、中国経済に3兆5,000億米ドルを追加するようなものです。
このような改革パッケージの構成要素とは何でしょう。
すべては健全なマクロ経済的ファンダメンタルズから始まります。私は、ここ中国で健全なファンダメンタルズと強力な制度へのコミットメントがあることを知り、非常に勇気づけられました。中国は数十年にわたる目覚ましい成長により、生活水準が大幅に向上し、最も差し迫った短期的な課題に対処するための十分な政策バッファーができました。直近の課題は、不動産部門の基盤をより持続可能なものにし、地方政府の債務リスクを軽減することなどです。これらの課題に取り組むことは、質の高い成長の新時代への円滑な移行に不可欠です。 未完成の住宅の数を減らし、不動産部門が市場ベースで調整できるような余地を与えるための決定的な措置が、現在の不動産部門の問題の解決を加速させ、消費者と投資家の信頼を高め得ることを私たちの分析は示しています。
質の高い成長の鍵となるのは、国内消費を今以上に重視することです。そのためには、個人や家計の購買力を高めることが必要です。中国の社会保障制度は、地球上どの社会保障制度よりも多くの人口が対象となっています。それでも尚、対象範囲をさらに拡大し、給付を増やす余地があります。財政的に適切な形で年金制度を強化することなどです。
国内消費は所得の伸びにも依存しており、所得の伸びは資本と労働の生産性に結びついています。ビジネス環境を強化したり、民間企業と国有企業の競争条件を公平にしたりすることなどの改革は、資本配分を改善します。教育、生涯にわたる訓練、再教育などの人的資本と、質の高い医療への投資は、労働生産性の向上と所得の増加につながるでしょう。
これは、中国がAIの「ビッグバン」の機会を掴もうとしている中、特に重要です。人工知能の世界において、各国の準備体制は、もはや将来の目標ではなく、すでに今日の課題となっています。IMFは、各国のAI対策に不可欠な4つの分野として、デジタルインフラ、人的資本・労働市場、イノベーション、規制・倫理を特定しました。IMFの分析によると、中国はAI対策の面で新興市場国の最前線に立っており、十分に発達したデジタルインフラがあることで有利なスタートを切っています。強固なAI規制の枠組みを確立し、イノベーションを進めているほかの国との経済関係を強化することは、中国の躍進を後押しするでしょう。
同様に、中国はグリーン経済を発展させる上で大きな可能性を秘めています。中国はすでに再生可能エネルギーの導入で世界をリードしており、グリーンモビリティで急速な進歩を遂げています。その継続的なリーダーシップは、地球規模の気候危機に対処するために不可欠です。市場価格で販売する電力の比率を高める近年の進展を一段と発展させることで、中国の脱炭素化はさらに効率的になります。また、排出量取引制度の適用範囲を産業部門に拡大することも脱炭素化を促します。
今後の変革は容易ではありません。中国の目覚ましい発展は、何億人もの人々に多大な利益をもたらしてきました。非常に高い成長率の環境で一生を過ごしてきた若い世代は、多くの国が以前経験したことと同様、経済が成熟し、成長が緩やかになるという時代を生きています。
しかし、高金利から質の高い成長への移行は、分岐点における正しい道であり、中国はこの道を進む決意を固めています。 政府が認識しているように、質の高い発展は究極的には改革にかかっています。この努力において、IMFは、現在進行中の政策対話や相互学習などを通じて、中国のパートナーとなることにコミットしています。分断化や気候変動、債務などの地球規模の課題に協力することにおいてもです。
協力することで、すべての人が恩恵を受ける
密接につながっている世界において国際協力は、これらの問題解決に不可欠です。こうした問題は国際社会の最も脆弱な加盟国に大きな影響を与えることが分かっています。世界は問題に対処するためにIMFに集まります。私たちの取り組みに対する中国の継続的な貢献に感謝しています。
中国は、IMFの低所得国向け譲許的融資制度や、最近創設された強靭性・持続可能性制度(RSF)、能力開発イニシアティブへの拠出を通じて、IMFの融資能力の強化 を支援してきました。中国は、IMFの恒久的財源を50%増やすという合意の形成において、目覚ましいリーダーシップを発揮してきました。
また、中国が、新興市場国と発展途上国の過剰債務に対処する上で重要な役割を果たしてきたことも認識しています。 多くの国が過剰債務に陥っているか、それに近い状況にあるため、債務救済を加速させるために債権者の間で多くの取り組みが必要であり、中国が引き続き力強く関与して下さることを期待しています。
辰[竜]のダイナミズムと自信、幸運があれば、そして国際協力の精神を改めて強化することができれば、中国と世界は今日私たちが直面している課題に共に立ち向かい、すべての人にとってより繫栄した未来を築き始めることができます。
ありがとうございました。谢谢!
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