アジア太平洋地域経済見通しのイベントでの岡村健司IMF副専務理事の冒頭演説

2022年5月19日

ご来賓、ご列席の皆さま、そして JISPA奨学生の皆さま、

おいでくださりありがとうございます。  2020年初頭以来初めて、東京でのこのイベントを対面で開催できたことを大変嬉しく思います。個人的に、IMFの副専務理事になって初めて東京へ帰国するので、特に嬉しい機会となりました。 

本日私たちは、世界およびアジア太平洋地域の経済見通しに関するIMFの見解を共有します。

ご存じの通り、過去2年間は大変な時期でした。  各国は回復しつつありますが、パンデミックがまだ終わっていないことを忘れてはなりません。  加えて、経済的な影響につながる人道的災難であるウクライナでの戦争が起き、問題が悪化しました。今日、われわれはパンデミックと戦争に直面しています。二重の危機です。

ウクライナでの戦争は、一次産品価格の上昇と欧州の成長鈍化の影響という2つの主要な方法で域内の成長に打撃を与えています。

アジアでは、消費者が食品とエネルギー価格の上昇の痛みを感じています。輸出業者は欧州の貿易相手の需要減少に直面しています。供給網の混乱により商品が市場に出るまでの時間が長くなり、コストも上がりました。

これは全て世界的なインフレ圧力を押し上げます。米国と欧州では、今世代で最も速いスピードで物価が上がっています。10年続いていた非伝統的な金融緩和策は、当初予想より速く引き締められています。インフレ期待が抑制されなければ、一段と引き締められることとなるかもしれません。IMFを含め世界中が、国際市場への影響を検討しています。波及効果を考慮しなければなりません。脆弱な国に対しては特に言えることです。

こうした中でも、ここアジアでは2021年の物価上昇率が他と比べてずっと低かったことは重要な留意点です。例えばアジアの新興市場国·発展途上国の食品価格は昨年、値上がりが2%未満でした。アフリカや欧州、ラテンアメリカの9%超より良好です。域内の多くの国で物価上昇率は依然として中央銀行の目標以下に抑えられています。

後にプレゼンテーションで話し合いますが、パンデミックと戦争、国際金融環境の引き締めが組み合わさって、アジアの政策当局者にとって2022年も難しい1年となるでしょう。困難な選択が待ち受けています。景気刺激策を続けて成長を支えるか、支援を縮小して債務と物価を安定させるか。  トレードオフは各国の状況により異なります。  政策を調整し、明確に情報発信することが求められます。

各国がこうした課題に取り組む中、IMFは引き続き、域内の加盟国を支援することに尽力します。

これをもって、同僚のジェイとラニルに続きをお願いします。ご清聴ありがとうございました。

 

 

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