第40回国際通貨金融委員会(IMFC)コミュニケ
2019年10月19日
我々は、直近の自然災害による人命の損失と破壊的な影響に対し、バハマの人々と政府に対し深くお悔やみ申し上げる。
世界経済の見通しと政策の優先事項
世界経済は、本年、約3パーセントの水準で成長が見込まれるが、4月以降、成長のペースは減速を続けている。成長は翌年に上向くと見られているものの、見通しは非常に不確実であり、高い下方リスクにさらされている。これらのリスクには、貿易を巡る緊張や政策の不確実性、地政学的リスクが含まれ、限られた政策余地や高い水準にあり増加している債務、金融の脆弱性の高まりといった背景もある。その他の長期にわたる課題も残っている。
我々は、全ての人々の利益となるよう、リスクを緩和し、強靭性を高め、成長を補強するため、全ての適切な政策手段を個別にまた集合的に用いる。利用可能な財政余地は、必要に応じて需要の下支えに利用されるべきである。財政政策は、財政再建が債務の持続可能性の確保のために必要である場合には、注意深く策定され、成長に配慮し、社会的な目的の保全をすべきである。金融政策は、中央銀行のマンデートと整合的な形で、インフレが目標に向けた軌道を維持するか目標付近で安定すること、インフレ期待を引き続き支えることを確保すべきである。中央銀行の決定は引き続きよくコミュニケーションがとられ、データに基づくものである必要がある。我々は、金融の脆弱性や金融安定に対して生じつつあるリスクについて、マクロプルーデンス措置を含む手段によって監視し、必要に応じて対処していく。
強固なファンダメンタルズや健全な政策、強靭な国際通貨システムは、為替レートの安定に不可欠であり、強固で持続可能な成長や投資に貢献する。柔軟な為替レートは、場合によっては、ショックを吸収するものになりうる。我々は、為替レートの過度な変動や無秩序な動きが、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを認識する。我々は、通貨の競争的切下げを回避し、競争力のために為替レートを目標としない。
我々は、成長、雇用、生産性の引上げや強靭性の向上、包摂性を促進するために、構造改革を推進する。我々は、汚職への対処等によって、強力なガバナンスへのコミットを再確認する。我々は、イノベーションとより競争的かつ柔軟な市場を促進する政策を推進し、人口動態の変化から生じる課題に対処するよう努力する。我々は、全ての人々が経済活動に貢献し、その利益を共有し、調整コストを負う人々を効果的に支えるよう機会を提供する。
我々は、政策の不確実性を減少させ、国際的な枠組みや協調を強化するための努力を促進する。
- 自由で、公正で、互恵的な物品・サービス貿易及び投資は、経済成長及び雇用創出の主要な原動力である。現在及び将来の課題に対処するよく遵守させられているルールを備えた強固な国際貿易体制は世界の成長を下支えする。このため、我々は、貿易の緊張を解決する必要性を認識し、WTOの機能を改善するために必要なWTO改革を支持する。
- 我々は、世界経済の持続的な成長を支えるマクロ経済政策と構造政策を通じて、過度な世界的不均衡を削減するために協力する。
- 我々は、可能な限り速やかな金融セクター改革アジェンダの適時、完全かつ整合的な実施と完了、そしてこれらの改革の影響に関して現在行われている評価について、重要性を強調する。我々はまた、規制と監督に関する継続した協力を通じて分断に対処し、構造変化に規制を適応させ、データ・ギャップを縮小する。
- 我々は、特にデジタル化に関する税制を含む、現代的で世界規模に公正な国際課税システムを目指し、有害な税の競争、人為的な利益移転、及び、その他の租税に関する課題に対処する。我々は、コルレス銀行関係の解消やその悪影響に引き続き対処する。我々は、また、マネーロンダリングやテロ資金、拡散金融その他の不正な資金の源泉及びその経路に引き続き対抗する。
- 我々は、債務者と公的・民間の債権者双方による債務透明性と持続可能な貸付慣行の強化、及び、債務再編における既存の枠組みを活用した債権者間の協調の強化に、引き続き共に取り組む。
国境を越えるその他の課題に対処するには、持続的な協働が不可欠である。我々は、「2030 年の持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた努力を支援する。我々は、パンデミック、サイバーリスク、気候変動、自然災害、エネルギー不足、紛争、移民、難民その他の人道上の危機がもたらすマクロ経済的な影響に対処し、これに対する抵抗力をつけようとする国内及び国際的な努力への支援を継続する。我々は、関連課題に対処する一方、金融テクノロジーを活用するための協働を継続する。
IMFの業務
我々は、専務理事のグローバル政策アジェンダを歓迎する。IMFは、以下の事項の実現のために、その権限に則り、引き続き加盟国を支援し、基準設定主体や他のパートナーと協調していく。
加盟国がリスクを軽減し成長を促進することへの支援: 我々は、通貨・マクロ金融政策への提言を促進するIMFの広範なアジェンダを歓迎し、統合的な政策枠組みという、現在進行中の作業についての進捗を期待する。我々は、IMFのガバナンスフレームワークに沿った、汚職への対処を含むガバナンスへの重点化を支持する。市場競争問題を含めた、潜在生産力を促進するための構造改革に関する取組の継続をIMFに求める。
債務持続可能性と透明性の強化 :我々は、債務透明性と持続可能なファイナンシングの強化に向けた加盟国への支援等を通して、IMFと世銀による債務者及び債権者との協働のための様々な角度からのアプローチの継続した実施を支持する。我々はまた、IMFに対して、財政機関と財政の枠組みの強化、公的債務の公表の強化を、加盟国と共に、引き続き取り組んでいくことを求める。我々は、更新された低所得国向け債務持続可能性フレームワークの継続的な実施や、市場アクセスを有する国々を対象とした債務持続可能性フレームワークや、IMFの債務上限ポリシーの見直しに期待する。
包摂性を強化し機会を拡大する政策の促進 :我々は 社会的支出への関与のための新たな戦略稼働に向けたIMFの努力を歓迎する。我々は各国の関与を促す戦略、目的に合わせた財政支援、及び能力開発の強化を通じて、脆弱国や紛争被害国へ焦点を当てていくことを強化する取組を支持する。また、我々は持続可能な開発目標達成を助けるための提言と分析の提供を支持する。我々は、能力が限られた国及び脆弱国の各国の状況に合わせた手法を用いつつ、「税に関する協働のためのプラットフォーム」の他のパートナーとの協働や中期歳入戦略に関する経験の活用等を通じて、加盟国の国内資金動員の強化を助けるようIMFに求める。我々は、ジェンダー予算の分野も含む、ジェンダーと格差の問題のマクロ経済的な分析を歓迎する。
国際的な協力の向上 :我々は、国際収支不均衡と、為替レートに対する、厳格かつ公平で、多国間で一貫した評価を実施するためのIMFの継続した努力を歓迎する。我々は、政策提言と貿易関連のマクロ経済分析を通じた、貿易におけるリスクの緩和と信認向上のためのIMFの努力を支持する。我々は、コルレス銀行関係の解消の原因と悪影響に対処するためのさらなる努力を求める。我々は、国際的な規制改革アジェンダ、AML/CFTを含む不正な資金の流れへの対処に係る作業並びに、国際的な税の変化が低所得国及び発展途上国に与える影響の分析を含む国際租税の問題に係る取組における、IMFによる他機関との協働及び貢献を支持する。我々は、グローバル金融セーフティ・ネットの強化と、IMFの貸出手段の要素の再検討や地域金融取極(RFAs)との協働の深化等を通じた、強靭な国際通貨金融システムの促進に向けた更なる努力を支持する。
世界的な課題に対する世界的な解決の促進: 我々は、フィンテックがもたらす影響に関する、バリ・フィンテック・アジェンダと整合的なIMFの取組を歓迎する。我々はまた、金融セクターにおけるサイバーリスクの強靭性を高める各国の努力を支援する取組を歓迎する。IMFは、そのマンデートと整合的な形で、気候変動の低減・適応戦略の加盟国における実施に関するガイダンスの提供を求める声の高まりに対応する。我々は、特に小国と低所得国など、自然災害に脆弱な国に対する強靭性の構築に向けた、IMFによる他機関との協働での継続的な支援を支持する。我々はまた、紛争や難民危機の影響を受けた国々に対してIMFが現在行っている支援を支持する。
変化を牽引し支援するための政策ツールの調整: 我々は、2020年の包括的サーベイランス見直しや、金融セクター評価プログラムや複数通貨慣行ポリシーの見直しを通じた、サーベイランス向上に対するIMFの継続的な努力を歓迎する。我々はIMFに対して、プログラムデザインとコンディショナリティや譲許的ファシリティの見直しにおける提言を取り入れていくことを求める。我々は、データ基準イニシアティブとIMFへのデータ提供に関する取組、データと統計の包括的な戦略の実施、サーベイランスや貸付と能力開発との統合に向けた継続的な努力を期待する。
我々は、IMFによる、加盟国に対して付加価値の高い支援を継続的に提供する努力、並びに効率性を高める努力を歓迎する。このため、我々は、優秀なスタッフを惹き付け維持する努力を歓迎する。我々は、人事戦略、給与及び福利厚生の包括的な見直し、並びに企業リスク管理にかかる作業を含む、進行中の、制度の現代化のためのイニシアチブを歓迎する。我々は、2020年の多様性基準に向けた進捗をIMFに求める。我々は、理事会におけるジェンダーの多様性の促進を支持する。
IMF資金基盤とガバナンス
グローバル金融セーフティ・ネットにおけるIMF の中心的役割を維持すべく、我々は、強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMF にコミットしていることを再確認する。我々は、第15次クォータ一般見直しにおけるクォータ増資に対する進捗の欠如に留意し、理事会に対して、第15次クォータ一般見直し、及びIMFの資金基盤及びガバナンス改革のパッケージに関する作業の完了、及びできる限り早期に総務会に報告することを求める。我々は、IMFの現状の資金規模の維持を支持し、2016年の2国間融資取極を1年間延長することを歓迎する。我々は、新規融資取極の倍増、及び2020年を超えた2国間融資の更なる暫定的協議を考慮することを期待している。
第15次クォータ一般見直しを超えて、我々はクォータの十分性について再検討すること、指針としての新クォータ計算式を含め、第16次クォータ一般見直しの下でIMFのガバナンス改革を継続していくこと、及び当該見直しが2020年から延長され、2023年の12月15日までに完了することにコミットする。この文脈において、我々はIMFの資金基盤におけるクォータの主要な役割を確かにすることに未だコミットしている。クォータシェアのいかなる調整も、ダイナミックな国々のシェアが、一方では最貧国のメンバーの発言権と代表性を保持しつつ、これらの国々の世界経済における相対的な地位に沿って増加し、新興市場国・途上国全体としてのシェアが増大しうるような結果となることが期待される。
その他の問題
我々は、前専務理事であるクリスティーヌ・ラガルド氏に対し、過去8年に亘るIMFへの卓越したリーダーシップと加盟国並びに国際社会への顕著な貢献に深い感謝を示す。ラガルド氏のリーダーシップの下、IMFは、マクロ金融サーベイランスの更新、財政支援、貸付制度、及び能力開発の拡張、IMFの政策や業務における社会的な成果や人的側面への関心増加、及び気候変動やジェンダー、ガバナンス、所得不平等をIMFの取組に統合することを含めて、加盟国のニーズに向き合い応え続けるための重要な改革に取り組んだ。ラガルド氏はまた、IMFが加盟国へスタッフを派遣するための金融基盤の確保、ダイナミックな新興国・途上国への一層の代表権の保証、及びIMFのガバナンス改革への支援達成にたゆまず取り組んできた。我々は、欧州中央銀行総裁としてのラガルド氏の新たな役割に幸運を祈念する。我々は、移行期間における専務理事代行としてのデイヴィッド・リプトン氏の働きに感謝する。
次回IMFC会合は、2020年4月18日にワシントンD.C.にて開催される。
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