第37回国際通貨金融委員会 (IMFC) コミュニケ

2018年4月21日

議長: 南アフリカ準備銀行総裁 レセチャ・クガニャゴ

委員会は、前議長であるアグスティン・カルステンス氏に対し、2015年から2017年までの当委員会の活動へのかけがえのない貢献に対する深い感謝を示し、国際決済銀行(BIS)の総支配人としての成功を祈念する。委員会は、レセチャ・クガニャゴ総裁を新たな議長として歓迎する。

世界経済の見通しと政策の優先事項

世界経済の成長は、投資と貿易の力強い回復に牽引され、更に強固となり、ますます幅広いものとなっている。リスクは、短期では概ね均衡しているが、数四半期以降は、引き続き下方に偏っている。金融上の脆弱性の高まり、貿易と地政学的緊張の高まり、及び、歴史的に高い水準にある世界の債務もまた、世界経済の成長見通しを脅かす。人口動態の逆風と低迷する生産性の伸びは、より高く、より包摂的な成長が将来実現する可能性を減少させうる。

現下の好調な経済を維持し、強靭性を高め、全ての人々の利益となるよう中期的な成長を引き上げる政策や改革を推進するための機会の窓は引き続き開かれており、迅速に活かされるべきである。我々は、強固、持続可能、均衡的、包摂的、かつ、雇用が豊富な成長を達成するため、引き続き全ての政策手段を用いる。中央銀行のマンデートと整合的な形で、金融安定上のリスクに留意しつつ、金融緩和は、インフレ率が依然として弱い状況下では継続されるべきであり、また、インフレ率が中央銀行のターゲットに戻りつつあると見られる状況下では徐々に解除されるべきである。財政政策は、柔軟で成長に配慮したものとし、必要に応じてバッファーを再構築し、景気循環増幅効果(プロシクリカリティ)を避け、インフラや労働力の技能に投資するための余地を創出し、公的債務残高対GDP比を持続可能な道筋に乗せることを確保すべきである。

構造改革は、調整コストを負う人々を効果的に支えつつ、生産性、潜在成長、及び雇用を引き上げることを目指すべきである。我々は、金融セクターの強靭性を更に強化するため、金融セクター改革アジェンダの適時、完全かつ整合的な実施と可能な限り速やかな最終化の重要性を強調する。我々は、金融システムにおいて生じつつあるリスク及び脆弱性を引き続き監視し、必要に応じ対処する。また、政策は包摂性を強化して技術革新や経済統合による利益を幅広く共有するとともに、それに伴うリスクを管理すべきである。我々は、適切で持続可能な政策を追求することにより、世界経済の成長を支える方法で、過度な世界的不均衡を削減するために協働する。

強固なファンダメンタルズや健全な政策、強靭な国際通貨システムは、為替レートの安定に不可欠であり、強固で持続可能な成長や投資に貢献する。柔軟な為替レートは、場合によっては、ショックを吸収するものになりうる。我々は、為替レートの過度な変動や無秩序な動きが、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを認識する。我々は、通貨の競争的切下げを回避し、競争力のために為替レートを目標としない。

我々は、共有する課題に対処するために協力する。我々は、貿易に関するG20ハンブルクサミットの成果を実施することの重要性を再確認し、更なる対話や行動の必要性を認識する。我々は、我々の経済に対する貿易の貢献の強化に取り組んでいる。我々は、世界規模の公正で現代的な国際課税システムのための取組や、デジタル化から生じるものを含む租税及び競争上の課題への適切な対処、並びにマネーロンダリング及び、テロ資金供与、大量破壊兵器拡散資金供与、腐敗、その他の不正な資金の源泉及びその経路への対抗を継続する。

我々は、「2030年の持続可能な開発目標」の達成に向けた努力を支援する。我々は、債務者・債権者の双方による債務透明性や持続可能な貸付慣行の向上、及び、低所得国の債務脆弱性の解消に取り組む。我々は、パンデミック、サイバーリスク、気候変動や自然災害、エネルギー不足、紛争、移民、難民その他の人道上の危機がもたらすマクロ経済的な影響に対処している国々を支援する。

IMF の業務

我々は、専務理事のグローバル政策アジェンダに係るアップデートを歓迎する。IMFは、以下の事項の実現のために、そのマンデートと整合的に、加盟国の支援と、他との協調を継続する。

  • 安定した国際通貨・金融システムの促進 :我々は、2018年対外セクター報告書における過度な世界的不均衡と為替レートの評価を、厳格、公平、率直、かつ、透明に実施するための努力を歓迎する。我々は、「機関としての見解」に基づく資本フロー管理政策に係る現状調査作業に期待する。
  • 共有の課題に加盟国が対処することへの支援 :我々は、金融テクノロジー、暗号資産とサイバーセキュリティの分野において、IMFが利害関係者と協働することを支持する。我々は、「税に関する協働のためのプラットフォーム」等を通じ、国際課税問題と国内資金動員においてIMFが引き続き役割を果たすことを支持する。我々は、IMFに対し、各国当局が中期的な歳入戦略を策定することを支えるための、明確なプロセスを定めることを求める。我々は、コルレス銀行関係の解消や、送金、貿易の流れ、及び金融包摂を含む、その悪影響への対処に取り組む国々を支えるための更なる努力を支持する。我々は、各国が「2030年の持続可能な開発目標」を達成することを支援するIMFの作業への支持を再確認する。我々は、各国が大規模な難民の流入のマクロ経済的な結果に対処することを支えるための、IMFの継続した努力を支持する。
  • 債務持続可能性の確保 :多数の国々、特に低所得国において、債務脆弱性が増大している。我々は、IMFと世界銀行グループに対し、債務透明性と持続可能性の向上及び低所得国の債務脆弱性に対処するための多方向からの作業計画について協働することを求める。我々は、IMFに対し、財政枠組みの強化や債務管理能力の改善のために加盟国と、持続可能な貸付慣行の促進やデータギャップの解消について債務者及び債権者と、それぞれ密接に協働することを求める。
  • 強靭性の強化と中期的見直し向上 :我々は、腐敗を含むガバナンスの問題へのIMFの関与強化、及び、社会保護問題へのIMFの関与を手引きする枠組みを確立する努力を歓迎する。我々は、IMFが今後のマクロ経済分析において、テクノロジーとデジタル化が、格差、生産性、労働市場と金融市場、財政政策、金融政策、そしてデジタルエコノミーの計測等に及ぼす効果を検討する必要があることに合意する。我々はまた、若者の失業、及び、ジェンダーの包摂性や労働参加率が成長に与える影響に関する作業を歓迎する。我々は、IEO評価「IMFと脆弱国」に対応した、IMFのマネジメント実施計画に期待する。
  • 加盟国の状況に応じた政策的解決策を策定するための政策ツールの向上 :我々は、「サーベイランスの中間見直し」の調査結果を歓迎し、公平性の確保、説得力及び危機予防のための有効性の強化、波及効果の把握の改善、及び、マクロ的に重要な課題が変容していることへの適応に向けた、サーベイランスの取組みにおける更なる改善に期待する。我々は、AML/CFT(マネーロンダリング・テロ資金供与対策)プログラム、金融セクター評価プログラム、能力開発戦略、及び、市場アクセスを有する国々を対象とした債務持続可能性分析の枠組みの見直しを支持する。
  • 国際通貨システムの強化 :我々は、グローバル金融セーフティ・ネットの更なる強化と、地域金融取極との協働に向けた作業を引き続き支持する。我々は、G20データギャップ・イニシアティブへのIMFの貢献を支持する。我々は、小国及び脆弱国に関するものを含む低所得国向けのファシリティ及びIMF支援プログラムのコンディショナリティとデザインの見直しに期待する。我々は、能力開発の有効性及び説明責任の強化、並びに、更新された低所得国向け債務持続可能性フレームワークの実施における各国支援に向けた継続した努力を評価する。

IMF 資金基盤とガバナンス

グローバル金融セーフティ・ネットにおけるIMF の中心的役割を維持すべく、我々は、強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMF にコミットしていることを再確認する。我々は、第15 次クォータ一般見直しを完了することと、ダイナミックな国々のシェアが、これらの国々の世界経済における相対的な地位に沿って増加し、その結果新興市場国・途上国全体としてのシェアが増大しうるような、クォータシェアの調整の基礎としての新たなクォータ計算式に合意すること、一方で最貧国のメンバーの発言権と代表性を保持すること、にコミットしている。我々は、理事会に対して、上述の目標に沿う形で、第15 次クォータ一般見直しを2019 年春会合まで、遅くとも2019 年年次総会までに完了させるよう迅速に取り組むことを求める。我々は総務会への進捗に係る報告に留意し、次の会合までの更なる進捗に期待する。我々は、2016 年のバイ融資取極の下でのコミットメントの確保の進捗を歓迎する。我々は、2010 年ガバナンス改革の完全な実施を求める。

我々は、IMFの質の高いスタッフを保ち、2020年の多様性目標を達成するための努力を強化することの重要性を改めて強調する。我々は、理事会におけるジェンダーの多様性の促進を支持する。

次回IMFC会合は、2018年10月13日にインドネシア・バリにて開催される。

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