Typical street scene in Santa Ana, El Salvador. (Photo: iStock)

写真:Gopixa/iStock by Getty Images

IMF サーベイ・マガジン : ラガルド氏:より良い未来の経済を築くために、明日の成長を高める

2015年4月16日

  • 世界経済は回復を続けているが、成長は緩やかでばらつきがある
  • 現在の成長率は、雇用と所得を向上させ貧困を削減するには不十分
  • 今日、そして明日の成長を高め、連携する

際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事は、ワシントンDCでの記者会見で、現在の世界経済の成長率は、高失業率を是正し中産階級の所得を向上させ、貧困を削減するには十分ではないと述べた。

IMFのクリスティーヌ・ラガルド氏:「潜在成長率が低下している。我々は経済が中期的に成長できる率までこれを引き上げなければならない」(写真:IMF

IMFのクリスティーヌ・ラガルド氏:「潜在成長率が低下している。我々は経済が中期的に成長できる率までこれを引き上げなければならない」(写真:IMF

2015年 IMF・世界銀行春季会合

ワシントンで開かれる2015年IMF・世界銀行の春季会合に先立ち記者会見に臨んだラガルド氏は、より良い未来の経済の構築は、今日の成長と明日の成長を向上させ連携することにかかっていると述べた。

同氏は、IMFは最新の経済見通しで今年の世界経済の成長率を昨年とほぼ同じ3.5%、来年は若干ペースが加速し3.8%を予測していると述べた。

報道陣に対しラガルド氏は「世界経済の回復が続いているのは良いニュースだ。しかし、成長は依然緩やかでばらつきが見られる。これはあまり歓迎できるニュースではない」と述べた。春季会合の参加者は、この「新たな凡庸」が「新たな現実」になるのをどのように防ぐかについて話し合うことになる。

「より良い未来を築くためには、現在の状況を改善しなければならない」と述べた同氏は、政策担当者は、今日の成長を引き上げることから始めることができようと続けた。主な措置は以下を含む。

需要を支えるための政策パッケージ。特有の状況に合わせ調整したもので、必要なところでは緩和的な金融政策、そして可能なところでは金融政策の引き締めを行い、賢明な財政政策を実施することを含める。

金融の安定性リスクに対処する。リスクは、超低金利、変動幅の大きい一次産品価格と為替相場、及び米国の短期金利上昇の可能性に起因している。

金融部門政策の強化。金融リスクは上昇しかつ移動しており-先進国・地域から新興市場国・地域へ、銀行からノンバンク金融部門へ、そして政府のソルベンシーから市場の流動性へ-、こうした事態に対処する。

ラガルド氏は今日の成長を押し上げるだけでは不十分だと述べた。「我々は、経済が中期的に成長できる率まで引き上げる必要もある。潜在成長率が低下しているが、その背景には人口動態の変化、生産性の低下に加え、一部の国では危機の遺産などがある」

強力なリーダーシップ

こうしたトレンドを反転するには、労働市場から製品市場、インフラ、貿易、人的投資などの分野での構造改革に真剣に取り組む必要があることを意味している。ラガルド氏は、こうした改革の導入には強力なリーダーシップが必要だろうと述べた。

さらに同氏は、今日、そして明日の成長を向上させるには連携が必要だと強調した。同時に、成長をより持続可能で包摂性あるものとするためには、国際協力も不可欠である。

「我々は、速いペースで成長している新興市場国・地域をより良く統合するための努力などを通し、国際通貨制度の耐性を高めるための改革を継続していかねばならない」

ラガルド氏は、2015年は「開発のための融資、新たな『持続可能な開発目標』 、及び気候変動という三つの重要な課題に世界が注目するという、開発分野にとり特別な1年となろう」と述べた。

グローバル政策アジェンダ

ラガルド氏は「グローバル政策アジェンダ」に言及した(下記ボックス参照)。同アジェンダについては、IMFの政策諮問委員会である国際通貨金融委員会と春季会合で意見を交わすことになっている。同氏は、同アジェンダは、今後12カ月間のIMFの活動の戦略的方向性の概要を示していると説明した。

求められる総合的な政策パッケージ

今日の成長を向上させ、明日の見通しを強化し、未来のために連携する。これがグローバル政策アジェンダが掲げる全体としての目標である。同アジェンダは2015年春季会合の場で、クリスティーヌ・ラガルド専務理事が加盟国政府高官に提示する。

IMFの188加盟国の政策優先課題、並びにIMFがこれをどのように支援していくのかを示すグローバル政策アジェンダは、IMFの政策諮問委員会である国際通貨金融委員会の4月18日の会議で協議される。また、2014年のワシントンでの年次総会で加盟国とIMFが協議した目標への進捗報告も含まれる。

同報告書は、均衡ある持続的な成長を促すためには、今日の実際の総産出量と明日の潜在GDPを強化するとともに、リスクを低下させ新たな世界的な課題に対応するための総合的な政策パッケージが不可欠だとしている。以上に加え、重要な国際会議が3件開催されるなど、2015年は、世界が今後10年そしてその後も持続可能な開発に向け進むべき道を定める絶好の機会であると述べた。

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