IMF サーベイ・マガジン : 今こそ実行の時!持続可能な成長を支えるために財政政策を活用する
2015年4月15日
- 財政リスクは高止まり
- 原油価格の下落はエネルギー価格設定を改革する機会
- 安定したマクロ経済環境こそ、成長を支える環境
世界的に経済の回復が緩やかでばらつきがあるなか、健全な財政管理により、実現が困難な成長と雇用を確保することができる。
財政モニター
国際通貨基金(IMF)は最新の「財政モニター」のなかで、多くの国で回復を支えている影響力の大きな要素を特定した。原油価格の下落、成長を支える金融政策、及び財政調整ペースの減速といった要素が全て、各々の役割を果たしている。
しかし一方で、財政リスクは高止まりしていると同報告書は警告している。先進国・地域は低成長、低インフレ、そして高債務という三つの脅威にさらされている。新興市場及び途上国・地域は、成長が鈍化し金融と為替相場の変動に関連したコストの上昇という問題を抱えている。原油及び一次産品輸出国は、歳入が減少し打撃を受けている。
賢明な租税制度と支出、そして強固な財政枠組みが大きな違いをもたらす。 IMFのヴィトル・ガスパル財政局長は「財政政策は、信認の構築と成長強化で引き続き中核的な役割を果たしている」と述べた。
年に2回発表されるIMFの「財政モニター」は、世界の財政の動向をモニタリングする。最新号は、行動が必要な3分野の概要を示している。
• 財政枠組みの強化
• エネルギー補助金の改革
• 財政政策を利用し生産の安定化を図る
先進国・地域、債務により依然緩慢
公的債務が引き続き成長の逆風となっている。2010年以降多大な努力が払われてきたにもかかわらず、先進国・地域の債務の対GDP比は平均で依然として100%を超えている。今後の減少ペースは遅いと見られ、また債務見通しが上方修正された国もある。
債務削減努力は、米国など一部の予想以上に力強い成長に支えられてきた。しかし、なかでもユーロ圏など多くの先進国・地域で低いインフレ水準がこうした努力の妨げとなってきた。
成長とインフレは、債務負担を大幅に緩和する可能性がある。仮に、オーストリア、イタリア、日本そしてポルトガルが2017年までに4%の名目成長率を実現することができれば、これらの国々の債務比率は2020年までに10パーセントポイントも減少する可能性がある。
新興市場と低所得国
新興市場、及び中所得国・低所得国の平均的赤字は拡大しており、2015年に増加すると見られる。原油輸出国は、価格の急落により大きく歳入が減少した。財政の引き締めで対応した国もあれば、赤字の拡大でショックに対応している国もある。
金融市場のボラティリティ、資本流出、及び為替相場が、ブラジルやエクアドル、ロシアといった国々の借り入れコストを押し上げた。
最近のエボラ出血熱の流行により、ギニア、リベリア、及びシエラレオネの既に脆弱だったインフラにかかる圧力が増した。こうした国々は、IMFが新しく設置した「大災害抑止救済基金」の最初の被支援国となった。同基金は、こうした公衆衛生危機にある国々に債務救済を行う。
行動が求められる分野
「財政モニター」は、三つの主な提言の概要を示している。第一に、財政リスクを管理し債務の持続可能性を確保するために、財政の枠組みを強化するよう提言している。健全な管理は、マクロ経済の安定性と成長の実現で支援的役割を果たすことができる。
第二に、原油価格の下落は、エネルギー補助金及びエネルギー税の改革の機会である。直近では、アンゴラ、コートジボワール、エジプト、インド、インドネシア及びマレーシアといった、20以上の国がエネルギー補助金を削減するための措置を採った。エネルギー価格の適正化は、経済、環境、及び公衆衛生にとり有益であろう。また、政府による財政の健全化努力や、教育や医療といった中核分野への投資の拡大も支えよう。先進国・地域では、労働税を減らし、その分をエネルギー税の引き上げでまかなうことができよう。
第三に、「財政モニター」の分析は、安定したマクロ経済環境がなぜ成長を支えるかを説明している。30年間・85の国や地域を対象とした分析が明確な結果を導き出した。財政政策を利用することで、生産を安定化させ、毎年平均成長率を0.3%の上乗せすることができる。IMFのザビエル・デブランがブログで、政府は下降期に生産を安定させることができるよう上昇時に節約する必要があると要約している。