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IMF地域事務所初のバーチャルセミナーで世界・地域経済見通しを共有

[2020年5月28日、東京] COVID-19の感染拡大が続く中、国際通貨基金(IMF)アジア太平洋地域事務所(OAP)は今日、初のウェビナーを開催し、世界及び地域の経済見通しと国家金融市場の発展に関する経済サーベイランスの成果と政策提言を共有しました。

2020年4月版「世界経済見通し(WEO)」と「国際金融安定性報告書(GFSR)」の要点を登壇者2人が紹介する同地域事務所初のIMFバーチャル経済セミナーには、公的機関、大学、民間部門、メディアから53人が参加しました。

まず、同地域事務所の鷲見周久所長が「世界経済見通し」の要点を紹介。新型コロナ危機を「他に類を見ない危機」と表現し、2020年から2021年の世界経済損失は9兆ドルに達する可能性があると述べました。「封じ込めが最優先事項です…感染拡大が封じ込められたときに、回復が円滑且つ迅速なものとなるよう、人命と生活を守るために必要な措置を講じなければなりません」と、鷲見は言いました。また鷲見は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を相殺するために実施されている金融・財政政策について説明し、「政府は可能な限りの措置を講じる必要がありますが、説明責任を維持する必要があります」と強調しました。

鷲見は、最近の世界及び地域の経済発展を解説し、今後の見通しシナリオとリスクについて議論した後、新型コロナ危機下と危機後の両方について、各国に対するIMFの幅広い政策アドバイスを共有しました。「私たちはCOVID-19感染拡大に対して団結する必要があります」と結論付け、IMFは加盟国が現在直面している極めて困難な課題の対処を支援するために、国際協力を促進していると述べました。

続いて、IMFシンガポール代表であるヨハン・スクミットマンが、最近の金融市場動向と最新の「国際金融安定性報告書」について報告しました。スクミットマンは、パンデミックの発生後、リスク資産の価値が崩壊し、市場の変動性(ボラティリティ)が急上昇した一方で、広範なデフォルトの予想が借入コストの急増に繋がったことを説明。しかし、スクミットマンは感染拡大の影響を抑えることを目的とした断固とした金融・財政政策アクションが、3月下旬から4月上旬に投資家感情を安定させ、市場の損失を抑えることに役立ったと語りました。

「しかし、一部の市場には依然として緊張感があり、不確実性とリスクが高いことを覚えておくことが重要です」とスクミットマンは警告し、今後も金融・財政政策は経済に対する永続的被害を最小限に抑え、力強い回復を可能とする支えになると付け加えました。

プレゼンテーション後には、多数の参加者が質問を投げかけました。ある参加者は、銀行の不良債権の潜在的増加とグローバル・バリューチェーンの展望をめぐる懸念を提起しました。別の参加者は、世界的な景気拡大政策がインフレ圧力をもたらすことができるかを質問しました。また、各国がパンデミック後のリセットを利用して、持続可能な開発目標(SDGs)に追いつくことができるかを尋ねる声も上がりました。これに対して、鷲見同地域事務所所長は、より環境に優しい回復が大いに望まれると答えました。

多くの参加者がセミナー後のアンケートに回答し、新型コロナ危機下における世界及び地域経済の見通しと市場動向について学ぶことができたと答えました。また一部の参加者からは、新型コロナ危機下におけるIMF緊急融資とその有効性、そして各国の危機後の財政持続可能性についてのバーチャルイベントの開催要望がありました。

アジェンダ

2:00-2:30 pm

第一部
IMF世界経済見通し

登壇者:鷲見周久IMFアジア太平洋地域事務所長
講演資料(英語)

2:30–2:50 pm

 

第二部
国際金融安定性報告書(GFSR)
登壇者:ヨハン・スクミットマン IMFシンガポール駐在代表
講演資料(英語)

2:50–3:15 pm

質疑応答

登壇者プロフィール

  • 鷲見周久
    国際通貨基金(IMF)アジア太平洋地域事務所(OAP)所長。フィリピン、シンガポール、ニュージーランド、フィジーへのIMF代表団を率いるなど、アジア太平洋諸国を中心にIMFで8年間勤務しています。また、IMFアジア太平洋局(APD)の金融セクター・サーベイランスグループ代表を務め、2015年には”The Future of Asian Finance”を出版するなど、アジア金融の将来に関するプロジェクトを主導しました。IMF着任前は、財務省副財務官、理財局国庫・国債担当審議官、金融庁総務企画局参事官など日本政府で要職を歴任しました。

  • ヨハン・スクミットマン
    IMFシンガポール代表として、シンガポール、マレーシアおよびアジア全体の金融市場動向を担当。シンガポール着任前は、IMFのアジア太平洋局、西半球局、財務局、金融資本市場局での勤務を経験しました。行動金融、為替ヘッジ、アジアの人口動態変化の経済的影響など、金融とマクロ経済に関する幅広いトピックについて発表しています。Goethe University Frankfurtにて博士号(金融経済学)を取得。