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ラガルド専務理事、G20会議でよりバランスのとれた国際経済体制を促進

[2019年6月10日、福岡] 福岡で開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議で財相らが「より強力で、持続可能でバランスのとれた包括的な成長」に向けたコミットメントを再確認する中、国際通貨基金(IMF)の クリスティーヌ・ラガルド専務理事は、同会議の議論を主導し、より緊密な協力と多国間主義に根ざした国際経済体制を促しました。

IMFはまず、G20経済見通しに関するサーベラインス・ノートと、世界経済成長を支えるために現在の貿易緊張を解決する必要性を示したラガルドのブログ記事を発表し、会議を方向づけました。閣僚会議に先立ち、専務理事は昨年の実施分を含む米中関税によって、世界のGDPが0.5%分―つまりは南アフリカのGDPよりも大きい約4,450億米ドル分―減ると指摘。保護主義的措置は成長を損なうだけであると強調し、より開かれ安定した透明性のある貿易システムを呼びかけました。

会議では、各国の財務大臣が米中貿易対立の余波に対する懸念を表明し、世界経済は安定しているかもしれないが、見通しは不透明でリスクは下向きに傾いているという意見を共有しました。二日間に渡った会議の最後に発表されたコミュニケでは、「貿易と地政学的緊張」が激化する危険性を指摘し、リスクを軽減するために「さらなる行動をとる用意がある」と強調しました。これを受け、ラガルドは声明を発表、現在の貿易緊張を緩和することが最優先事項であることを再表明しました。

また会議では、2020年までに、FacebookやGoogleなどのIT大手に対するグローバル企業課税に関する共通ルールをまとめ、高齢化を含む人口動態の変化がもたらす世界的な経常収支の不均衡と課題に対処することが合意されました。

閣僚会議に先立ち、ラガルドはハイレベルセミナー「デジタル時代の未来」に参加し、金融イノベーションに関する基調講演を行いました。「フィンテックは、金融ツールの利用コストを削減し、数百万人がより良い生活を構築することを可能とします」と、参加者に語りました。

IMFと世界銀行の共同調査の主要結果を紹介し、フィンテックは公式経済部門におけるジェンダーギャップを埋めるための金融包摂ツールであり、サイバーセキュリティー、マネーロンダリング防止、決済システムにおける国際協力を促進できると述べました。一方でフィンテックは、ビッグデータと人工知能(AI)に基づいた金融商品を提供できる大手IT企業による寡占にもつながる可能性があるとも指摘。「これは金融の安定性と効率性に対して提示されたユニークな体系的課題です。金融の安定性と完全性を維持し、消費者を保護し、金融リテラシーを向上させる方法を見つける必要があります」と話しました。

またラガルドは、IMF加盟国との対話にも参加。アルゼンチン、韓国、南アフリカ、イギリスの財務大臣と中央銀行総裁と会談し、世界経済の状況と政策調整による経済成長の安定化への取り組みについて議論しました。

福岡滞在中には、日本の伝統的な騎射である流鏑馬など、福岡の伝統的なパフォーマンスも楽しみました。

G20公式アジェンダに加えて、ラガルドは日経グループのインタビューに答え、日本の聴衆に働きかけました。インタビューでは、世界経済とフィンテックの将来について彼女の見立てを述べるとともに、女性のエンパワメントにも触れ、日本の男性経営者は日本経済活性化のために、才能ある女性の労働力を活用すべきである、という力強いメッセージを送りました。

インタビュー終了後には、働く女性のための日経ウェブメディアの羽生祥子編集長と立ち話。羽生が身に着けていたラベンダー色のジャケットをきっかけに、二人がラベンダーの町として知られる南フランスのエクス=アン=プロヴァンスにある同じ大学に通っていたことを知りました。羽生は「同じ大学の出身だと伝える準備をしてきた訳ではなく、その場での即興でした。ラガルド氏とお話することができ、とても嬉しかったです」と言いました。

会議閉幕後、ラガルドは福岡を後にし、議長である麻生太郎財務大臣と黒田東彦日本銀行総裁が閣僚会議を成功に導いたことに感謝を示しました。また福岡の人々のおもてなしの精神と、展示ブースで紹介された豊かな歴史や文化を称賛しました。地元大学の女性ボランティアの一人は、「このような大規模な国際会議を福岡で開催できることを非常に誇りに思います。ボランティア向け研修を通じて、私たちの街を再発見しました。女性にとって国際的ロールモデルであるラガルド氏にお会いして、ぜひ福岡について多くのことを紹介したいと思っていました」と話しました。

ラガルドは、6月28日から29日まで大阪で開催されるG20サミットに出席するため、再度来日が予定されています。