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IMF旗艦リポート「世界経済見通し」の重要ポイントなど最新情報を紹介
【2019年4月24日、東京】 国際通貨基金アジア太平洋事務所では今日、経済問題セミナーを開催、IMFの旗艦レポート「世界経済見通し」と「国際金融安定性報告書」の最新版の要点を紹介しました。セミナーには省庁や財政機関、メディア、学界、国際機関などから約100人が参加しました。
同セミナーはIMFの知見を広く知らしめるため、同地域事務所のアウトリーチの一環として開催しているもの。
まず、IMFシンガポール代表のヨハン・スクミットマンが登壇、国際金融安定性報告書からキーポイントを紹介しました。金融市場は2018年後半に下落したものの、2019年初めには米中貿易交渉への楽観と中央銀行の金融政策への粘り強いアプローチを背景に大幅に回復した、と述べました。金融情勢の急激な締め付けは、金融の脆弱性を表にさらすことになり、直近の財政安定化へのリスクを高めることにつながる、とも述べました。
スクミットマンは最後に、同報告書では金融政策を広く知らしめ金融健全化への政策をとるよう提言している、と締めくくりました。
続いてIMF調査局のエコノミスト・ウェンジー・チェンが登壇、「世界経済見通し」最新版の要点を紹介しました。世界経済は2018年後半になると、米中貿易摩擦などの影響で、それまでの世界的経済の膨張から一転した、と述べました。世界の経済成長率は、2018年の3.6%から2019年には3.3%に減り、2020年に再び3.6%に上昇すると見られています。貿易方針の不確実性、中国経済の失速、ブレグジットなど多くの不利益なリスクがある中、必要不可欠なことはすべての経済が生産性を上げるための行動を起こし、包括性を高め、復元力を強化することです、と述べました。
チェンはさらに、自身の専門である「企業の市場支配力の影響」(世界経済見通し第2章)に関する調査について触れ、これまでのところマクロ経済への影響は少ないものの、今まで以上に市場支配力が高まると、投資が弱くなるなど負の影響が出始めるだろう、と述べました。
二人のプレゼンテーション後にはそれぞれ質疑応答が行われ、会場からは、新興市場国の債務問題への懸念が寄せられたほか、企業の市場支配力と格差の拡大の因果関係への質問など、様々なコメントや質問が出されました。
写真:IMFシンガポール代表のヨハン・スクミットマンとIMF調査局のウェンジー・チェン