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パンデミックの経済的影響 初期的考察のための5つのグラフ

ジョン・ブルードーン   ギータ・ゴピナート   ダミアーノ・サンドリ 著

新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって世界はリセッション(景気後退)に陥った。2020年は世界金融危機を上回る景気後退が起こるだろう。どの国においても、感染者急増と政府が実施する感染拡大防止措置を追いかけるかたちで、経済的な損失が膨らんでいる。

この感染症の矢面にまず立ったのは中国であり、2月中旬時点で6万人を超える感染者が確認されている。イタリア、スペイン、フランスといった欧州諸国では感染症が深刻な時期にあり、感染者が急増しているアメリカがこれに続いている。多くの新興市場国と発展途上国では感染が始まったばかりのようだ。

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欧州で最初にコロナウイルスが大打撃をもたらしたイタリアでは、感染拡大防止のため、政府が39日に全土で外出禁止令を課した。その結果、公共空間の人出と電力使用量が劇的に減少した。この点は感染率が他地域よりも非常に高かったイタリア北部で特に顕著である。

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アメリカではコロナウイルスの世界的流行による経済的影響が前例のないスピードと深刻さで生じている。3月後半の2週間に1千万人近くが失業保険の申請を行った。この申請者数の驚異的な急増は世界金融危機の最悪期だった2009年を含めて、過去に類を見ない。

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新興市場国では新型コロナウイルスによる混乱が広がり始めている。年初にほぼ動きを見せていなかった購買担当者指数(PMI)は、外需下落を受けて、また内需減少の予測が強まってきているために、製造業の生産活動の急低下を示唆している。ひとつ望ましい点としては、年初に急低下した中国のPMIが外需に力強さが欠ける中でもわずかに改善してきている。

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中国における大気中の二酸化窒素濃度を示す日毎の衛星データを見ると、そこにも経済活動のわずかな回復が反映されている。これは工業や輸送の活動状況の代替指標として見ることができるが、化石燃料利用の副産物としての大気汚染の深刻度も示している。感染拡大が深刻化した1月から2月に二酸化窒素濃度は急低下したが、その後、新たな感染が減るにつれて増加してきている。感染減少に伴って、中国は厳格な感染防止措置を緩和することができた。

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中国経済の回復は限定的であるものの、励みとなる。防止措置が感染拡大の制御に成功すれば、経済活動再開への道が開かれることを示している。しかし、ウイルスの世界的流行が今後どうなるかは非常に不透明であり、中国などの国々で感染が再拡大する可能性は無視できない。

この感染症の大流行を克服するためには、公衆衛生面・経済面で世界的かつ協調的な政策努力が必要となる。新型コロナウイルスの影響を受けた国々に迅速な支援が確実に届くように、国際通貨基金(IMF)はパートナー機関との協力のもと、緊急融資、政策助言、技術支援を通じて自らにできることをすべて実行している。

414日公表の「世界経済見通し(WEO)」では、新型コロナウイルスの世界的流行がもたらす経済的影響をさらに詳細に取り上げる予定である。

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ジョン・ブルードーンは、IMF調査局で「世界経済見通し」を担当する課長補佐。以前は同局の構造改革ユニットでシニアエコノミストとして勤務した。また、欧州局のユーロ圏チームの一員として「世界経済見通し」策定に携わり、数多くの章の執筆に従事した。IMFに勤務する前はイギリスにて、オックスフォード大学でのポスドク研究員を経て、サウサンプトン大学の教授を務めた。国際金融、マクロ経済学、開発に関して様々なテーマで出版している。カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得。

ギータ・ゴピナートIMF経済顧問兼調査局長。ハーバード大学経済学部ジョン・ズワンストラ記念国際学・経済学教授であり、現在は公職就任のため一時休職中。

国際金融とマクロ経済学を中心に研究を行い、経済学の代表的学術誌の多くに論文を発表している。為替相場、貿易と投資、国際金融危機、金融政策、債務、新興市場危機に関する研究論文を多数執筆。

最新の『Handbook of International Economics』の共同編集者であり、「American Economic Review」の共同編集者や「Review of Economic Studies」の編集長を務めた経験もある。以前には、全米経済研究所(NBER)にて国際金融・マクロ経済学プログラムの共同ディレクター、ボストン連邦準備銀行の客員研究員、ニューヨーク連邦準備銀行の経済諮問委員会メンバーなどを歴任した。2016年から2018年にかけてインド・ケララ州首相経済顧問。G20関連問題に関するインド財務省賢人諮問グループのメンバーも務めた。

アメリカ芸術科学アカデミーと経済学会のフェローにも選出。ワシントン大学より各分野で顕著な業績を上げた卒業生に贈られるDistinguished Alumnus Awardを受賞。2019年にフォーリン・ポリシー誌が選ぶ「世界の頭脳100」に選出された。また、2014年にはIMFにより45歳未満の優れたエコノミスト25名の1人に、2011年には世界経済フォーラムによりヤング・グローバル・リーダー(YGL)に選ばれた。インド政府が在外インド人に授与する最高の栄誉であるプラヴァシ・バラティヤ・サンマン賞を受賞。シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスで経済学の助教授を経て、2005年よりハーバード大学にて勤務。

1971年にインドで生まれ、現在はアメリカ市民と海外インド市民である。デリー大学で経済学士号を、デリー・スクール・オブ・エコノミクスとワシントン大学の両校で修士号を取得後、2001年にプリンストン大学で経済学博士号を取得。

ダミアーノ・サンドリIMF調査局世界経済研究課の課長補佐。以前にはブラジル担当のシニアエコノミストを務めたほか、様々なIMF代表団の一員として欧州諸国を訪問した。これまでに一流学術誌や多くのIMF出版物に研究が掲載されている。経済政策研究センター(CEPR)のリサーチフェロー。「IMF Economic Review」の編集委員。ジョンズ・ホプキンス大学で経済学博士号を取得。