特別引出権(SDR)は国際準備資産です。SDRは通貨ではなく、その価値は米ドル、ユーロ、人民元、日本円、英ポンドの5通貨で構成されるバスケットに基づいて決めています。
国際通貨基金(IMF)は、通貨が金の価格に連動していて、米ドルが中心的な国際準備資産だった1969年に、補完的な国際準備資産としてSDRを創設しました。IMFはSDRについて、1米ドルに相当する微量の金と等価値であると定めました。
1973年に固定相場制が終了すると、IMFはSDRが国際通貨のバスケットと等価値であると定義し直しました。SDRは通貨ではなく、保有国が必要に応じて通貨と交換できる資産です。IMFなど一部の国際機関では、SDRを会計単位として使っています。
個人や民間組織はSDRを保有できません。IMF加盟国とIMF自身がSDRを保有します。IMFは中央銀行や多国間開発銀行などの他の保有者を承認する権限がありますが、個人や民間組織はSDRを保有できないようになっています。2023年2月時点で、20の機関が規定に基づいて定められた保有者として承認されています。SDR参加国と規定された保有機関はSDRを売買できます。ただし、規定された機関は加盟国と異なり、SDR配分を受け取ることができず、指定取引でのSDR交換を要請することもできません。
米ドルでのSDRの価値は、ロンドン時間で正午頃に見られる直物為替相場に基づいて、日毎に決定し、IMFホームページに掲載します。
IMFはSDRを構成する通貨バスケットについて、世界の貿易制度と金融制度における通貨の相対的な重要性を反映するために、5年ごとに見直します。妥当な場合は、5年を待たずに見直します。2015年に終了した見直しでは、 中国人民元がSDRバスケット入りの条件を満たしたとの決定がIMF理事会によって下されました。2016年10月、中国人民元はSDRバスケットの構成通貨となり、SDR金利の設定に使用されるバスケットに中国国債の3か月物の利回りが加わることになりました。
IMFによる見直しでは、SDRバスケット通貨を選ぶ基準や、SDRバスケットを構成する各通貨の量(単位数)を決めるために使われる当初の通貨の比重を検討します。これら通貨の量は5年間のSDR価値評価期間を通じて固定されていますが、バスケット構成通貨間の為替相場に応じて、各通貨の比重は変動します。SDRの価値は市場為替レートに基づいて、日毎に決定します。
SDRバスケットに採用される通貨は次のふたつの基準を満たさなければなりません。
2021年3月、世界的な新型コロナウイルス流行への対応を優先するために、IMF理事会が SDR評価バスケットを2022年7月31日まで延長したことから、5年ごとのSDR評価見直しのサイクルが実質的に修正されました。2022年5月に完了した見直しでは、SDRバスケットの通貨構成を維持したうえで、通貨の比重を更新しました。新たなバスケットは2022年8月1日に発効しました。
IMFはIMF協定の下で、一定の条件が満たされた場合に、加盟国にSDRを配分できます。ただし、規定で定められた保有者は配分の対象となりません。一般配分は過去に4度行われており、直近の2021年では、IMFの総務会が6,500億米ドル相当の約4,560億SDRに及ぶ一般配分を承認し、世界の流動性拡大を図りました。この配分はIMF史上最大の規模となり、各国が新型コロナウイルスの流行に対応する上で一助となりました。2009年の 一般配分は2,500億米ドル相当の約1,610億SDRにのぼり、世界金融危機の最中に流動性を高めました。
SDR一般配分にはIMF加盟国の広い支持が必要です。IMFはSDRを、加盟国のクォータ(出資割当額)の比率に従って配分します。
IMFは2009年に330億米ドル相当の215億SDRに上る一回限りの 特別配分を実施することで、1981年以降にIMFに加盟した国にとってSDR配分がより公平になるようにしました。当時、こうした国々はIMF加盟国の5分の1超を占めていながら、一度もSDR配分を受け取ったことがなかったためです。
SDR金利は、IMFからの借入に伴い加盟国に課される利息や、 保有するSDRに対し加盟国に支払われる利子などを計算する際の基礎となります。
SDR金利は、SDRバスケットの構成通貨国・地域の、短期市場における3か月物金利の加重平均を基に毎週決定します。
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更新は 2023年1月でした