IMFによる金の保有
金は、1973年にブレトンウッズ体制(為替の固定相場制度)が崩壊するまで国際通貨システムで中核的役割を果たしていました。その崩壊以降、通貨システムにおける金の役割は徐々に小さくなっています。しかし、金は多くの国々にとって今なお、重要な準備資産です。そしてIMFは現在も世界で最も多く金を保有する公的機関の一つです。 |
IMFによる金の保有
IMFは、1億340万オンス(3,217トン)の金を保有しており、指定機関に保管しています。IMFが保有する金の価額は、バランスシート上取得時の価格に基づいており、59億SDR(およそ87億米ドル)と計上されています。2009年3月末時点でIMFが保有する金は、同時点の金の市場価格で換算すると948億米ドルになります。IMFが保有する金の一部は1978年4月のIMF協定*第2次改正以降に取得されたものが1,297万オンス(403.3トン)あり、2009年3月末の市場価格では119億米ドルになります。後述するとおり、この部分はIMFの加盟国に返還される資産の対象からは除外されます。
IMFが保有する金の大半は、IMF協定の第2次改正以前に、主に4種類の取引を通じて取得されました。第1に、当時の規定では加盟する際に各国が最初に払い込むクォータ(出資割当額)の25%と以後の増資の拠出は金によるとされていました。IMFが保有する金の多くはこの取引によるものです。第2に、あらゆる費用の支払い*(加盟国によるIMF融資の利払いなど)は通常、金で行われていました。第3は、ある加盟国が他の加盟国の通貨を購入しようとした際、IMFに金を売却することで取得できたことによるものです。1970年から71年にかけて南アフリカが行ったIMFへの金の売却はそのような規定による主な例です。第4には、加盟国がIMFから受けた融資の返済を金で行うことが可能であったためです。
IMFの金に関する現在の方針
1978年4月のIMF協定の第2次改正は、金を第2次世界大戦後の国際為替制度における各国共通の通貨単位として用いること、ならびに特別引出権(SDR)の価値基準として使用することを廃止しました。またその改正は金の公定価格も廃止し、IMFと加盟国間の取引に金を使用する義務を撤廃しました。さらに、IMFが金による取引を行う際、IMFがその価格の管理や固定価格の設定をしないよう義務付けています。
このように、現在IMF協定はIMFの業務や取引における金の使用を制限しています。IMFは、市場価格に基づいて保有する金を売却すること、また加盟国がIMFに対する債務の履行のために金で支払う場合にはその時点の市場価格に基づいて合意された価格で受け取ることは許されています。こうした金の取引にはIMFの総議決権*の85%の賛成が必要です。しかし、これ以外の金の取引、例えば貸付、リース、スワップ、担保としての金の使用や、金を購入する権限はありません。
IMF協定は、第2次改正時にIMFが保有していた金を1975年8月末時点の加盟国に返還する件についても規定を設けています。返還するにあたっては、対象となる加盟国のうち第2次改正時における各国のクォータに比例して金を買い入れることに同意した国に対して、かつての金の公定価格である1オンス当り35SDRのレートで売却することになります。この規定に基づく返還の決定は総議決権の85%の賛成が必要です。IMF協定は第2次改正以降にIMFが取得した金については返還の規定がありません。
金に関するIMFの方針は以下の原則に基づいています。
IMFの保有する金は、時価比過小評価されている資産であることからIMFのバランスシートを強固にしている。その流動化の際は、IMFの全般的な財務体質の弱体化につながらないようにする。
IMFは、財務体質を健全に保つためだけではなく、不測の事態に備えるためにも引き続きその資産の相対的に大きな部分を金で保有すべきである。
IMFは、金の市場が混乱を回避すべき責任を負う。
金の売却益は投資ファンドの新設に使うこととし、IMFが実際に利用できるのはその収益のみである。
IMFによる金の使用
設立当初のIMF協定の下では、通貨獲得のための金の売却、あるいは金による報酬や利子の支払いなどにより保有する金が流出しました。上で述べたとおり、協定の第2次改正以降は、金の流出は売却のみに限られることになりました。IMFが行った主な金の取引には以下のものがあります。
通貨補充のため(1957-1970年):IMFが保有する通貨を補充するため数回にわたって金を売却した。
南アフリカの金(1970-1971年):南アフリカから購入した金とほぼ同量の金を加盟国に売却した。
米国債への投資(1956-1972年):業務上の赤字相殺を目的として、収益を得るため、一部の金を米国に売却し、米国債に投資した。その後、IMFの準備資産が相当積み上ったため、米国政府から金を買い戻した。
競売及び「返還のための売却}(1976-1980年):IMFは、国際通貨システムにおける金の役割を縮小させるという加盟国間の合意を受けて、当時保有していた金の約三分の一にあたる5,000万オンスを売却した。この半分は当時の公定価格である1オンス当り35SDRのレートで加盟国に金を返還する形で売却された。残る半分は低所得国に対するIMFの譲許的融資の財源となる信託基金のための資金を調達するため、市場での競売にかけて売却した。
金の市場外取引(1999-2000年):1999年12月、IMF理事会はIMFが重債務貧困国(HIPC)イニシアチブに参加するにあたり必要な資金を確保するため、1,400万オンスを上限として保有する金の市場外での取引を承認した。1999年12月から2000年4月までの間にIMFと2加盟国(ブラジルとメキシコ)は1,290万オンスにのぼる取引を行った。当時ブラジルとメキシコはIMFに対して期限の到来する債務を抱えていた。この2カ国との取引はまずIMFが両国に市場価格で金を売却し、その売却益はHIPCイニシアティブのための特別勘定に組み入れられた。次に、IMFは同量の金を、同じ市場価格で買い戻し、当該国のIMFへの期限到来債務の決済に充当した。最終的にこれら一連の取引の結果、IMFの金の保有量に変動は無かった。
*リンク先の資料は、現時のところ英文のみ閲覧可能

