ファクトシート
変わり行くIMF—危機への対応
2009年9月
世界経済は過去数十年で最悪の危機の渦中にありますが、IMFはあらゆる手段を駆使して加盟国を支援しています。これまでにIMFは、融資枠を拡大し、その国際社会での様々な経験に基づき、かかる問題の解決に向けた施策に対し助言を行うと共に、IMF業務の近代化と、加盟国のニーズにより良い対応が可能な体制の構築を目指し改革を実施してきました。
危機への対応:融資規模の拡大。 IMFは世界経済危機に迅速に対応、世界の最貧国向け譲許的融資の大幅な増加を含め、これまでの融資額は1,600億ドル超という記録的な規模に達しています。
分析と焦点を絞った助言の提供。 世界的視野に立ち過去の危機の経験を反映したIMFのモニタリングや見通し・政策助言に対する需要は高く、20ヵ国グループ(G20)も広く活用しています。
より柔軟に。 IMFは融資枠組み全般の見直しを実施し、加盟国のニーズにより合った枠組みの構築を目指すと共に、融資条件を簡素化しました。
金融のセーフティ・ネットの構築。IMFは目下の危機の拡大を封じ込めるために、G20各国が合意したIMF財源の3倍増の実現に向けた各国の公約を取りまとめ、幅広い金融のセーフティ・ネットの構築を目指しています。
現下の危機からの教訓。IMFは、政策、規制及び世界金融システムの改革において、現下の危機からの教訓を活かす試みに貢献しています。
IMFの新たな融資枠組み
• 加盟国のIMF財源に対する融資利用限度の倍増
• 融資に対するマイナス・イメージの払拭に向けた合理化されたアプローチ
• 優れた経済実績を有する国を対象とした、フレキシブル・クレジットラインの新規設立
• 「厳しい」構造的コンディショナリティーを廃止
• 今後の焦点は、特定の措置からプログラム全体の目的に移行
融資枠組みの見直し。 世界的経済危機の中、加盟国支援に向けた動きのひとつとして、IMFはその貸付能力の強化を図っており、その融資のあり方に対する抜本的な見直しを承認しました。同見直しの結果、融資要請国の様々な状況を考慮した条件でより大規模な融資を提供することが可能となります。
優れた実績を有する新興市場国を対象とした、フレキシブル・クレジットラインの新規設立。フレキシブル・クレジットラインの承認を得られたならば、融資の支払いは段階的という形を取らず、また融資条件に縛られることはありません。これまでに、コロンビア、メキシコ、そしてポーランドに対し合計780億ドルの与信が承認されています。
IMF融資条件に関する新たなルール。2009年5月1日付けで、対低所得国プログラムを含むあらゆるIMF融資において、構造的パフォーマンス基準は廃止されました。構造改革は引き続きIMF支援プログラムの一部として実施されますが、それは当該国の回復にとって不可欠であると判断された場合のみとされます。さらに政策のモニタリングは、合意された方策が特定の期限内に実施されなかった場合に課せられていた、公式なウェーバーの提出義務を取り除くことにより、マイナスのイメージを軽減する形で行われることになります。
より柔軟に、より少ない条件で。 IMF支援プログラムは、各国の状況に見合ったものとなっており、危機の解決に向けた喫緊の課題に焦点を絞ったものとなっています。
より柔軟になったIMF支援プログラムの例
1. 2008年11月のアイスランドにおけるIMF支援プログラムは、2009年の多額の財政赤字を認めています。これは為替レートの安定と銀行部門の再建に向けた措置(資本統制策を含む)を採りつつ、現在崩壊に直面している経済活動の悪化を防ぐことを念頭に置いたものです。
2. 2008年9月のコスタリカにおけるIMF支援プログラムでは、2009年の民間需要の落ち込みのマイナスの影響の軽減を図るとして、賃金の上昇やインフラに対する歳出など、拡張的な財政政策を実施します。
3. 2008年4月のグアテマラにおけるIMF支援プログラムでは、多国籍機関からの大規模な外部資金を活用し内需の下支えを行い適度な景気刺激策を実施したいとしています。危機の社会の最貧困層への影響を相殺するために、社会支出はGDPの0.6%増額される予定です。
4. パキスタンでは、経済の鈍化、追加的ドナー支援、そして優先事項への支出を維持する必要から、IMFと政策当局の間で2009年・2010年の財政赤字目標は緩和することで暫定的合意に至っています。これにより、追加的ドナー支援の吸収、成長の拡大並びに、社会・開発・国内難民問題を含む治安関連支出の増額への、財政的余地が創出されると考えられます。
社会的保護に重点
IMFでは、目下の危機対策として実施される経済調整 が、ソーシャル・セーフティ・ネットの構築・強化を通し、最脆弱層のニーズも確実に考慮したものであるよう尽力しています(関連ファクトシート「世界危機とIMFの役割:最脆弱層の保護に向けて」を参照のこと)。
社会支出の維持もしくは可能な分野では増加。例えばタジキスタンでは、IMF支援プログラムの下、社会及び貧困関連支出を2008年のGDPの7.3%から2009年にはGDPの8.7%に、更には2012年までには10%まで引き上げるとしています。
低所得国でのプログラムの約3分の1が、社会その他優先事項に対する支出の下限を設定しています。
構造改革は、最脆弱層保護の観点から立案されます。例えばエルサルバドル政策当局は非居住者向け電気助成金を撤廃し、社会支出の増加のための財政的余地を創出しました(最大でGDPの0.3%)。
IMFは、社会的保護実現への外部資金源の特定や、ソーシャル・セーフティ・ネット改革の促進に向け、世界銀行やドナー各国と緊密に協力しています。
世界最貧国への支援
• IMFは低所得国の世界危機対策を支援するため、譲許的融資を今後2年間で最大80億ドル急増する予定です。予定されているIMF保有の金の売却などを財源とし、譲許的融資は2014年までに最大170億ドルまで拡大すると見込まれています。
• 2009年7月中旬までに、サブサハラアフリカ諸国向け新規コミットメントは27億ドルを超えました。
• IMF譲許的融資の利用限度が倍増されました。
• IMFは、譲許的融資制度の見直しを行っており、より柔軟で低所得国のニーズに合った制度の構築を目指しています。
• これまでに低所得国24カ国がIMFによる合計約60億ドルの債務救済を受けました。
財政政策により柔軟性を持たせる。 現下の危機を受け、IMFは2008年並びに2009年の財政赤字と歳出の拡大を広く考慮、金融支援をより柔軟なものとしました。IMFプログラム実施中のアフリカ諸国の約80%(23か国中18カ国)で、財政目標は緩和されています。全サブサハラアフリカ諸国の2009年の財政赤字は、平均GDPの2%(産出国を含む場合は7.5%)拡大すると見込まれます。
より柔軟なインフレ対策。 2007年10月、低所得国向けプログラムは、2008年の平均インフレ率を5.3%と想定しました。しかし、2008年の世界的食糧並びに燃料価格高騰を受け上方修正を行いました。そして2008年10月、IMFスタッフは、2008年のインフレ率はIMF支援プログラム実施国において11%に達すると予測、結果は約12%となりました。
融資条件の簡素化。 コンディショナリティーは、中枢となる目的に重点を絞ったものとなりました。多くのプログラムにおいて構造的融資条件の項目は減少し、内容は特に緊急な公的財政管理改革など、最重要施策にこれまで以上に特化したものとなっています。
融資制度の見直し。 融資利用限度の倍増に加え、目下の経済危機により低所得国の多くが大打撃を被っている現状を受け、低所得国の多岐に渡るニーズに柔軟に応えることができるよう、IMFは譲許的融資制度の改革を行いました。この結果、IMFはより効果的な短期並びに緊急の金融支援を提供できるようになりました。新たな枠組みの下では、財源の拡充、借入限度の倍増、さらに金利に関しては2011年末までゼロ金利が設定されているなどより柔軟な条件が提示されています。
危機に対する防護壁を構築-IMF財源を3倍に
• 2009年4月2日のG20ロンドンサミットで、現下の危機対策としてIMFの融資財源の大幅な増加にむけて合意がなされました。
• G20各国は、IMFの融資財源を7,500億ドルに3倍増とすると共に、IMFの通貨である特別引出権(SDR)2,500億ドル相当分を配分し、世界経済へ追加的流動性注入を行うことで、合意しました。
• これまでのIMFの財源2,500億ドルからの倍増は、多くの加盟国との取極めにより実現しました。
• 財源7,500億ドルへの拡充 は、IMFの新規借入取極め(NAB)の拡大と近代化により実現を図っています。NAB参加国数を現在の26カ国から拡大し、最大5,000億ドルへ増額(加盟国からの約2,500億ドルの拠出を含む)すると共に、NABの柔軟性を高めることにより、より強力な「バックネット」を提供することが出来ると期待されています。
• 2,500億ドル相当のSDRの一般配分の実施により、SDRは約10倍に増加しました。 これは低所得国を含む多くの国にとって外貨準備金 の大幅な増額を意味します。
危機後の金融システム形成におけるIMFの役割
• 危機後の世界金融アーキテクチャーの形成と危機の再発防止に向け、IMFは各国政府並びに他の国際機関と緊密に連携しています。
• IMFは、国際的な観点を取り入れることによりリスクの分析能力強化を図るともに、早期警戒エクササイズの金融安定理事会(FSB)との共同開発や、金融セクター評価プログラム(FSAP)の改革などを通した、実体経済と金融部門、更に対外安定性の相関関係の検証に注力しています。
• 国別サーベイランスの有効性を高めるには更なる配慮が不可欠であり、従来以上の公平性・透明性そして率直性が求められています。
• IMFは、市場に対する世界規模での監督もしくは規制の見直しに関する助言も行っています。
世界経済の実情をより良く反映したIMF ガバナンス
• IMFの正当性と有効性を巡る最優先事項は、進行中のIMFガバナンス改革の完了にあります。
• 2008年4月に承認されたクォータとボイス(投票権)の改革の早急な批准が求められます。
• これらの改革は、活発な経済活動を見せている新興市場国のシェアの増加と低所得国のボイスの維持への第一歩です。
• 同改革が実行されたならば、54加盟国のクォータの増加が見込まれ、中でも中国、韓国、インド、ブラジル、メキシコが最大の増加幅をみることになります。
• これは、現在進行中の改革の第一のステップに過ぎません。G20各国は、次のステップとして、2011年1月までに新興市場並びに途上国の代表権の改善を完了させること、そして2009年10月までに新たなクォータ計算式開発に取り掛かることを要請しています。
